連棟式建物の切り離しに同意書は不要?同意なしで解体ができるケースを解説

連棟住宅やテラスハウス、長屋と呼ばれる連棟式建物では、一戸だけを切り離して解体しようとする際に「隣家の同意書が必ず必要なのか?」と悩む方も多いのではないでしょうか。
隣家との関係が良好であれば同意を得ることも難しくありませんが、なかには連絡が取れない、話し合いに応じてもらえないといった事情を抱えている方も少なくありません。
この記事では、連棟式建物の切り離し・解体における同意書の必要性を、法律上の義務と実務上の必要性に分けて解説するとともに、同意なしで進められるケース、同意が得られない場合の対処法についてもお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
連棟式建物(連棟住宅・テラスハウス・長屋)とは
連棟式建物とは、複数の住戸が壁を共有しながら一棟としてつながっている建物のことです。呼び方はいくつかありますが、いずれも構造上の考え方は共通しています。
それぞれの住戸には独立した玄関があり、マンションのように上下階で生活空間を共有することはありません。一方で、隣家との間にある壁は共用しているため、建物の解体や建て替え、大規模なリフォームを行う際には、隣接する所有者との調整が必要になるケースがあります。
また、築年数が古い連棟式建物の中には、現在の建築基準法に適合しておらず、「再建築不可」となっている物件や、単独で建て替えができない物件も少なくありません。そのため、一般的な一戸建てと比べて売却や活用の方法に制限が生じることがあります。連棟式建物を一般的な戸建て住宅と同じ感覚で考えてしまうと、思わぬトラブルにつながる可能性があるため注意が必要です。
「切り離し同意書」とは何か
「切り離し同意書」とは、連棟住宅の一戸を切り離し・解体する際に、隣家の所有者から工事内容について了承を得たことを示す書面のことです。法律で定められた書式があるわけではなく、施工業者や不動産会社が個別に作成するケースが一般的です。
主な役割は、これから行う工事の内容や範囲を隣家に説明し、了承を得たという事実を残しておくことにあります。口頭だけの合意では「言った・言わない」のトラブルに発展しやすいため、書面という形に残すことで、双方にとって安心材料になるという側面があります。
そもそも切り離し・解体に隣家の同意書は必要なのか
結論から言うと、切り離し同意書は「法律上必ず取得しなければならない書類」ではありません。ただし、実務上はほとんどのケースで同意書がないと工事を進めることが難しいのが実情です。ここでは、法律上の義務と実務上の必要性を分けて整理します。
法律上は同意書の取得義務はない
建物の解体や滅失登記の手続きにおいて、隣家の同意書提出を法律で義務付けている条文はありません。建物滅失登記は、原則として自分が所有する建物について申請するものであり、隣家の同意がなければ受理されないという制度にはなっていません。
実務上は同意書がないと工事が進めにくい
一方で、連棟住宅は壁や基礎の一部を共有していることが多いため、施工業者が「隣家の同意が確認できない工事は請け負えない」と判断するケースが少なくありません。
工事中の振動や粉じん、切り離し後の外壁補修などにより隣家に何らかの影響が及ぶ可能性があるため、後々のトラブルを防ぐ目的で同意書の取得を求められることがほとんどです。
同意書が必要になる主な理由
なぜ切り離し・解体の際に隣家の同意書が求められるのか、その背景にある主な理由を確認しておきましょう。
界壁や外壁を共有しているため
連棟住宅の多くは、隣家との境目にある壁(界壁)を共有しているか、少なくとも密着させて建てられています。一戸だけを切り離す場合、共有していた壁を新たに独立した外壁として補修・造作し直す工事が必要になるため、隣家の建物にも手を加える形になる可能性があります。
境界や越境の問題が生じやすいため
長年建っている連棟住宅では、正確な境界の位置が曖昧になっているケースや、屋根やひさしの一部が隣地に越境しているケースも珍しくありません。切り離し工事をきっかけに境界トラブルが表面化することもあるため、事前の確認と同意取得が重要な意味を持ちます。
解体工事が隣家に物理的な影響を与えるため
解体工事では振動や騒音が発生するほか、隣家の外壁や基礎に予期しない損傷を与えてしまう可能性もあります。工事内容を事前に説明し、同意を得ておくことで、万が一トラブルが起きた際の対応をスムーズに進めやすくなります。
同意なしで進められるケースとは
「連棟 切り離し 同意なし」で解体を検討したいと考える方もいるかもしれませんが、同意が不要となるかどうかは建物の構造や権利関係によって大きく異なります。ここでは、同意が不要となることもある代表的なケースを紹介しますが、あくまで一般論である点に留意してください。
構造的に完全に独立している場合
外観は連棟に見えても、実際には壁を共有しておらず、基礎や躯体が完全に分離して建てられている建物も存在します。このように構造上、隣家に一切影響を与えないと判断できる場合には、同意書がなくても解体・切り離しを進められることがあります。
共有部分や共有登記がない場合
壁や敷地の一部を共有していなかったり、単独の所有権で建物が完結している場合も、同意なしで進めやすいケースのひとつです。ただし、登記上は独立していても、物理的には壁や柱の一部を共有しているというケースもあるため、書類上の情報だけで判断せず、現地調査を含めて確認することが重要です。
同意書の要否は、建物図面や登記情報、実際の構造を専門家が確認したうえで初めて判断できるものです。「うちは大丈夫なはず」と自己判断せず、土地家屋調査士や解体業者に現地調査を依頼したうえで進めるようにしましょう。
同意が得られない・隣家が非協力的な場合の対処法
隣家との関係がこじれている、相手が非協力的であるといった事情で同意が得られない場合には、以下のような対処法を検討してみましょう。
丁寧な話し合いと書面での説明を重ねる
感情的な対立がある場合ほど、口頭でのやり取りだけでは誤解が生じやすくなります。工事の内容や期間、費用負担の考え方などを図面や書面にまとめ、あらためて説明の場を設けることで、相手の不安や誤解が解消されるケースもあります。
専門家を介して交渉を進める
当事者同士では話し合いが平行線になってしまう場合、弁護士や不動産会社、土地家屋調査士といった第三者の専門家を介して交渉を進める方法も有効です。専門家が間に入ることで、感情的な対立を避けつつ、法的に妥当な条件をすり合わせやすくなります。
隣家の所有者が不明・連絡が取れない場合の対処法
相続が繰り返されて所有者が誰か分からない、転居先が分からず連絡が取れないといったケースも少なくありません。このような場合には、以下のような対応を検討する必要があります。
登記簿・住民票などで所在を調査する
まずは登記簿上の所有者情報をもとに、住民票や戸籍の附票などから現在の所在を調査します。相続が発生している場合は、相続人を辿って現在の所有者を特定できることもあります。
不在者財産管理人・相続財産清算人制度を活用する
調査を尽くしても所有者が特定できない、あるいは相続人全員が相続放棄しているといったケースでは、家庭裁判所に不在者財産管理人や相続財産清算人の選任を申し立てる方法があります。選任された管理人・清算人が代わりに同意の可否を判断してくれるため、行き詰まった状況を打開できる可能性があります。ただし、手続きには時間と費用がかかるため、弁護士に相談しながら進めることをおすすめします。
同意書に盛り込むべき主な項目
実際に切り離し同意書を作成する際、どのような項目を盛り込めばよいか分からないという方も多いのではないでしょうか。「同意書 書き方」に迷った場合は、以下のような項目を押さえておくと安心です。
切り離し同意書に盛り込むべき主な項目
- 工事の内容・範囲(切り離し方法、解体の有無など)
- 工事期間・作業時間帯
- 共有していた壁の補修方法と仕上がりイメージ
- 工事費用の負担割合
- 工事によって損傷が生じた場合の対応方法
- 境界の確認内容
- 双方の署名・捺印
これらの項目を明確にしておくことで、工事後に「聞いていた話と違う」といった認識のズレを防ぎやすくなります。同意書の作成に不安がある場合は、土地家屋調査士や不動産会社に文案の作成を依頼するのもひとつの方法です。
同意なしで強行した場合のリスク
同意が得られないからといって、隣家への説明や配慮を欠いたまま工事を強行することはおすすめできません。ここでは、想定されるリスクを紹介します。
近隣トラブルに発展する可能性
事前の説明がないまま工事が始まると、隣家側は不安や不信感を抱きやすくなります。工事音や振動をきっかけに関係がさらに悪化し、以降の生活にも支障をきたす近隣トラブルに発展するケースも少なくありません。
損害賠償請求や訴訟に発展するケース
工事によって隣家の壁や基礎に損傷が生じた場合、損害賠償を請求される可能性があります。特に事前の説明や同意取得を怠っていた場合には、過失の程度が大きいと判断され、訴訟に発展するケースも考えられます。工事を進める際は、同意の有無にかかわらず、事前の説明と記録を丁寧に残しておくことが重要です。
同意が得られず行き詰まったら売却という選択肢も
話し合いを重ねても同意が得られない、専門家に相談しても解決の見通しが立たないというケースもあるでしょう。そのような場合には、無理に切り離し・解体を進めるのではなく、連棟住宅のまま売却するという選択肢も検討してみましょう。
連棟住宅や長屋は、一般の買主にとって購入のハードルが高い物件と見なされやすく、買取を専門とする不動産会社であれば、切り離しや解体を行わずそのままの状態で買い取ってもらえる可能性があります。同意問題を解決すること自体を目的にするのではなく、自分の状況にとって現実的な出口を選ぶという視点も大切です。
まとめ
この記事では、連棟式建物の切り離し・解体における同意書の必要性について、法律上の義務と実務上の必要性に分けて解説しました。同意なしで進められるケースもありますが、建物の構造や権利関係によって可否は大きく異なるため、自己判断せずに専門家へ確認することが重要です。
隣家との同意が得られない、所有者と連絡が取れないといった事情で切り離し・解体が進まない場合には、無理に工事を進めようとせず、専門家への相談や売却という選択肢もあわせて検討するようにしましょう。
当社では、連棟住宅や長屋など、売却が難しいとされる不動産のご相談・買取に対応しております。大阪市内で連棟住宅の切り離し・解体にお悩みの方は、同意が得られていない状況でも構いませんので、ぜひお気軽に当社までお問い合わせください。
















