相続不動産の売却時にかかる税金の計算方法|3年以内の特例、3000万円控除とは?

相続した戸建て住宅や土地、区分所有マンションの売却をするには、遺産分割協議や名義変更を行う必要があります。また、通常の不動産とは税制が異なるなど、相続不動産の売却時にはいくつかの注意点があります。
本記事では、相続した不動産の売却を検討している人に向けて、相続後に不動産を売却するメリット・デメリットをはじめ、売却時にかかる税金の種類や計算方法、適用できる特例や控除などについて解説します。
相続後の不動産をすぐに売却するメリット

不動産の相続が発生した場合、相続人は「すぐに売却した方が良いか?ある程度期間が経ってから売却した方が良いか?」と悩む場面もあるのではないでしょうか?
相続後の不動産をすぐに売却するべきかどうかは、自身が置かれている状況や考え方により異なります。まずは相続後の不動産をすぐに売却するメリットについて解説します。
相続税評価額が実勢価格より安くなる
相続した不動産は、相続税の計算において「相続税評価額」で評価されます。この評価額は、実際に市場で取引される価格(実勢価格)よりも低く設定されるケースが一般的です。
相続後すぐに売却した場合、「取得費加算の特例」などを活用することで、所得税や住民税の負担を軽減できる点も大きなメリットといえるでしょう。特に地価が高いエリアでは、この差額が大きくなりやすく、税務上有利に働くケースが多く見られます。
相続不動産の特例や控除を受けることができる
相続した不動産を一定期間内に売却することで、税制上の特例や控除を利用できる可能性があります。代表的なものとして「相続開始から3年以内の売却による取得費加算の特例」や、「被相続人の居住用財産(空き家)の3,000万円特別控除」などがあります。
これらの制度は適用期限や要件が明確に定められているため、売却のタイミングが遅れると利用できなくなる点に注意が必要です。早期に売却することで、税負担を抑えられる可能性が高まります。
相続人同士のトラブルを回避できる
不動産は現金と異なり、分割が難しい資産であるため、相続人が複数いる場合は遺産分割を巡ってトラブルに発展することがあります。共有名義で保有する選択肢もありますが、将来的な売却や管理の意思決定において意見が対立するリスクが残ります。
相続後すぐに売却し、現金化して分配することで、各相続人の取り分を明確にしやすくなり、争いを未然に防ぐことにつながります。特に関係性が複雑な場合や、遠方に住んでいる相続人がいる場合は、早期に売却することで相続手続きが円滑に進む可能性が高くなります。
相続税の納税問題を解消できる
相続税は原則として現金一括納付が求められるため、納税資金の確保が大きな課題となることがあります。特に複数の不動産を相続した場合は相続税額が高額となり、現金が不足していると納税に困るケースは少なくありません。
こうした場合、相続後すぐに不動産を売却することで、納税資金を確保できるというメリットがあります。延納や物納といった制度もありますが、手続きが煩雑で条件も厳しいため、現金化による対応が現実的な選択肢となることが多いです。スムーズな納税を実現するうえでも、早期売却は有効な手段といえます。
維持管理の手間やコストがなくなる
相続した不動産を保有し続ける場合、固定資産税や都市計画税のほか、建物の修繕費や管理費などの維持コストが継続的に発生します。空き家の状態が続くと、建物の劣化や防犯面のリスク、近隣トラブルにつながる可能性もあります。
特に遠方にある不動産の場合、定期的な管理が負担になるケースも少なくありません。相続後すぐに売却することで、こうしたコストや手間から解放され、資産を効率的に現金化できる点は大きなメリットとなります。
相続後の不動産をすぐに売却するデメリット

相続した不動産を早期に売却することには多くのメリットがある一方で、注意すべきデメリットも存在します。売却のタイミングによっては、想定よりも低い価格での成約や、十分な検討ができないまま意思決定をしてしまうリスクもあります。
感情の整理や将来的な資産活用の観点から、慎重に判断すべきケースも少なくありません。ここでは、相続後すぐに売却する際に考慮しておきたいデメリットについて解説します。
故人との思い出や気持ちを整理する期間が短い
相続した不動産には、故人との思い出や家族の歴史が詰まっていることが多く、感情的な価値も大きい資産といえます。相続後すぐに売却を進める場合、気持ちの整理が十分にできないまま意思決定を行うことになる可能性があります。
特に長年住んでいた実家や、家族の集まりの場であった不動産は、売却後に後悔を感じるケースも少なくありません。一度売却してしまうと買い戻すことは難しいため、経済合理性だけで判断するのではなく、自身や家族の感情面も踏まえたうえで慎重に検討することが重要です。
売却期間が短く想定価格より安くなる場合がある
相続後すぐに売却を進める場合、時間的な余裕がないことから、十分な販売活動や価格検討が行えない可能性があります。本来であれば複数の不動産会社に査定を依頼し、市場動向を見ながら最適な売却タイミングを見極めることが望ましいですが、早期売却を優先するとそのプロセスを簡略化せざるを得ないケースもあります。
結果として、相場より安い価格で売却したり、条件面で不利な取引となるリスクが高まります。特に需要が限定されるエリアや物件の場合は、焦って売却することで本来得られるはずの利益を取りこぼす可能性があるため注意が必要といえるでしょう。
有効な資産運用方法を検討する時間が限られる
不動産は売却するだけでなく、賃貸運用やリフォーム後の活用、あるいは保有し続けて資産価値の上昇を待つといった選択肢も考えられますが、相続後すぐに売却を決断すると、これらの活用方法を比較・検討する時間が十分に確保できません。
例えば、立地や需要によっては賃貸物件として安定した収益を得られる可能性もあり、短期的な売却よりも中長期的な運用の方が有利になるケースもあります。資産の特性や市場環境を踏まえた判断を行うためにも、複数の選択肢を検討する時間を確保することが重要といえるでしょう。
通算の所有期間が短いと短期譲渡所得になる
不動産を売却した際の税率は、所有期間によって「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」に区分されます。相続不動産の場合、原則として被相続人の所有期間を引き継ぐことができますが、被相続人が取得して間もない不動産などは通算の所有期間が短く、短期譲渡とみなされます。
具体的には、売却した都市の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合には短期譲渡となり「税率39.63%」、5年を超える場合は長期譲渡となり「税率20.315%」が課税されます。約2倍ほどの差が生じるため、売却タイミングは慎重に検討することが重要といえます。
相続不動産の売却時に必要な税金の種類

相続した不動産を売却する際には、主に以下の3つの税金が課税されます。
- 譲渡所得税
- 登録免許税
- 印紙税
なお、個人が売主となる不動産取引では消費税は課税されません。ただし、不動産会社に支払う仲介手数料などには消費税が課税される点に注意しましょう。
譲渡所得税
相続した不動産を売却して利益が出た場合、利益額(譲渡所得)に対して課税されるのが譲渡所得税です。ここでいう利益とは、売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いた金額を指します。
相続不動産の場合、取得費は被相続人が購入した際の価格を引き継ぐのが原則となります。税率は所有期間によって異なり、短期譲渡所得と長期譲渡所得で大きな差がある点が特徴です。所有期間が5年以下の場合は短期譲渡となり「税率39.63%」、所有期間が5年を超える場合は長期譲渡となり「税率20.315%」が課税されます。
なお、復興特別所得税や住民税も含めて課税されるため、実際の税負担は想定より大きくなるケースもあります。売却益が発生する場合は、事前に税額の目安を把握しておくことが重要です。
登録免許税
登録免許税は、不動産の登記手続きにかかる税金であり、相続不動産の売却においては主に名義変更の際に発生します。相続不動産を売却する際、登記名義人を被相続人から相続人に移す所有権移転登記を行う必要があり、この際に登録免許税が課税されます。一般的に「相続登記」と言われるものであり、所定の税額が必要となります。登録免許税は登記手続きごとに税率が異なり、以下のとおりです。
| 登記の種類 | 税率 |
|---|---|
| 所有権保存登記 | 評価額×0.4% |
| 所有権移転登記 | 「土地」 評価額×2% (マイホーム軽減税率適用時1.5%) 「建物」 評価額×2% (マイホーム軽減税率適用時0.3%) |
| 相続登記 | 土地・建物ともに 評価額×0.4% |
| 抵当権設定登記 | 評価額×0.4% (マイホーム軽減税率適用時0.1%) |
| 抵当権抹消登記 | 1件あたり1,000円 |
| 地目変更登記 | 1件あたり1,000円 |
| 住所等変更登記 | 1件あたり1,000円 |
(※軽減税率の適用は令和9年3月31日まで)
相続した不動産に抵当権が設定されている場合には、1件あたり1,000円の登録免許税が発生します。また、相続登記が完了した後、不動産の名義を「売主⇒買主」に変更する際にも登録免許税が課税されますが、所有権移転登記にかかる登録免許税は買主が負担するのが一般的です。
印紙税
印紙税は、不動産売買契約時に課税される税金です。売買契約書は課税文書に該当するため、契約金額に応じた収入印紙を貼付する必要があります。印紙税額は契約金額ごとに定められており、以下のとおりです。
| 契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
|---|---|---|
| 100万円超~500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
| 500万円超~1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
| 1,000万円超~5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
| 5,000万円超~1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
| 1億円超~5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 |
| 5億円超~10億円以下 | 200,000円 | 160,000円 |
| 10億円超~50億円以下 | 400,000円 | 320,000円 |
| 50億円超 | 600,000円 | 480,000円 |
(※軽減税率の適用は令和9年3月31日まで)
印紙の貼り忘れや消印漏れがあると、本来の3倍の過怠税が課される可能性があるため、契約時には不動産会社に確認を取りながら適切に対応することが重要となります。
相続不動産の売却時にかかる税金の計算方法

相続不動産の売却では、相続時に発生する相続税に加え、売却時には譲渡所得税や住民税、登録免許税や印紙税など、複数の税金が課税されます。各税金の計算方法は異なるため、税金総額が把握しづらいのが特徴です。
そこで本章では、より実践的に理解できるように、「評価額5,000万円」・「売却価格7,000万円」の不動産を相続、売却した際の税額をシミュレーションしていきます。
なお、実際の税額は固定資産税評価額や相続税評価額、取得費や各種控除の適用状況、相続人の人数などによって大きく変動するため、あくまで基本的な考え方と計算の流れを理解するための参考材料としてください。
相続税の計算方法
相続が発生すると相続税の納税義務が生じます。不動産売却の有無にかかわらず、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内に納税する必要があるため、相続税の計算方法をしっかり理解しておきましょう。
相続税は「遺産総額 – 基礎控除(3,000万円 + 600 × 法定相続人の数)」で算出した課税遺産総額に対し、税率をかけることで計算することができます。
今回は、相続財産が不動産のみ、相続税評価額5,000万円、法定相続人が2人の場合でシミュレーションを行います。まずは課税遺産総額を算出します。計算式は以下のようになります。
基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 2人)= 4,200万円
5,000万円 – 4,200万円 = 800万円
課税遺産総額は800万円です。相続税は法定相続分ごとに計算するため、一人あたりの課税対象は400万円となります。400万円に税率を掛けて相続税を算出します。なお、相続税率は課税対象額によって異なります。
| 法定相続分ごとの課税対象額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 10% | 0円 |
| 1,000万円超~3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3,000万円超~5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5,000万円超~1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超~2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 2億円超~3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 3億円超~6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
(※令和8年4月時点)
今回のケースでは、法定相続分ごとの課税対象額は400万円のため、「400万円 × 10%」で計算します。一人あたりの相続税額は40万円、2人合わせての相続税の合計は80万円となります。
譲渡所得税の計算方法
譲渡所得の申告は、不動産を売却した翌年の2月16日から3月15日までに確定申告によって行います。譲渡所得税は、不動産を売却したことによって得た利益から取得費と譲渡費用を差し引き、所有期間に応じた税率を掛けることで計算することができます。
- 不動産売却価格:7,000万円
- 取得費:3,000万円(被相続人が購入した金額)
- 譲渡費用:300万円(仲介手数料等の費用)
- 所有期間:10年
今回は上記の条件でシミュレーションします。譲渡所得税を算出するため、まずは譲渡所得を計算します。
7,000万円 – (3,000万円 + 300万円) = 3,700万円
課税対象額は3,700万円です。この金額に所有期間に応じた税率を掛けます。被相続人の所有期間と通算して、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合は短期譲渡、所有期間が5年を超える場合は長期譲渡とみなされます。それぞれの税率は以下のようになっています。
| 通算の所有期間 | 税率 |
|---|---|
| 所有期間が5年以下 | 39.63% |
| 所有期間が5年超え | 20.315% |
今回のケースでは、所有期間が5年を超えているため、「3700万円 × 20.315%」で計算します。計算の結果、譲渡所得税の金額は約751万円となります。なお、譲渡所得税には「住民税」と「復興特別所得税」が含まれます。
登録免許税・印紙税の計算方法
登録免許税は、相続によって不動産の登記名義人を変更する際に支払う税金です。「固定資産税評価額×0.4%」で計算することができます。今回のケースでは、「5,000万円×0.4%」で20万円が税額となります。
次に印紙税です。印紙税は不動産を売却する際の不動産売買契約書に貼付することで納税します。税額は売買価格によって異なり、7,000万円の場合は3万円となります。
ここまでのシミュレーション結果をまとめると、
- 相続税:80万円
- 譲渡所得税:751万円
- 登録免許税:20万円
- 印紙税:3万円
となり、合計854万円の税金を納める必要があります。不動産の取得費などにより納税額は大幅に変動するため、取得費を証明する書類(購入時の売買契約書など)を残っているかがとても重要なポイントとなります。
相続不動産の売却で適用できる特例・控除

相続した不動産を売却することで適用される特例や控除はいくつか存在しますが、代表的なものとしては「3,000万円特別控除の特例」や「取得費加算の特例」が挙げられます。
相続不動産の売却に適用される特例や控除を活用することで、納税額を減らせる可能性があります。ここからは、代表的な特例・控除について詳しく解説していきます。
空き家の3,000万円特別控除の特例
相続した不動産が空き家の場合、一定条件を満たすことで売却時の譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例です。一般的には「空き家特例」と呼ばれています。主な適用条件は以下の通りです。
- 相続または遺贈により、被相続人の居住用家屋またはその敷地等を取得していること
- 被相続人が亡くなる直前まで、その家に一人で居住していたこと(老人ホーム入所等の例外あり)
- 対象となる建物が、昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
- 区分所有建物(マンション等)ではないこと
- 相続の時から売却までの間、その家屋や敷地を居住用・事業用・賃貸用として使用していないこと
- 現行の耐震基準に適合していること、または、売却後一定期間内に耐震改修または解体を行うこと
- 建物を解体して土地のみを売却する場合、相続後から売却まで一定の未利用状態を維持していること
- 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却していること
- 売却価格が1億円以下であること
- 売却相手が、親子・配偶者など特別な関係者ではないこと
居住用不動産の3,000万円特別控除の特例
相続した不動産をマイホームとして使用していて、その不動産を売却する際には、譲渡所得から最大3,000万円を控除することができます。一般的に「マイホーム特例」と呼ばれ、主な適用条件は以下の通りです。
- 売却する不動産が、自分が居住している住宅、または過去に居住していた住宅であること
- 過去に住んでいた場合、住まなくなった日から3年以内(その年の12月31日まで)に売却していること
- 家屋とともに、その敷地や借地権をあわせて売却すること(一定条件で土地のみも可)
- 土地のみを売却する場合、解体後から売却までの間に賃貸・事業・居住用として使用していないこと
- 売却相手が、親子・配偶者など特別な関係者ではないこと
- 別荘やセカンドハウスではなく、生活の本拠として利用していた住宅であること
- 売却した年の前年・前々年に、同様の特例や買換え特例などを適用していないこと
マイホーム特例は、空き家特例と比べてマンション(区分所有建物)でも適用される点や、築年数や売却価格に制限がない点が特徴です。また、相続開始が起算日ではないため、相続後しばらく住んでいた場合でも適用される可能性が高いです。空き家特例よりも適用範囲が広い特例といえるでしょう。
取得費加算の特例
相続や遺贈で取得した不動産を一定期間内に売却した場合に、納めた相続税の一部を取得費に加算できる制度です。取得費が増えることで譲渡所得が減少するため、税負担を減らすことができます。
- 相続または遺贈により取得した財産であること
- 相続税が課税、納税されていること
- 相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年以内に売却していること
相続した不動産を売却するまでの手続き・流れ

相続した不動産を売却する際は、名義変更や遺産分割協議など、一般的な不動産売却とは異なる手続きが必要になります。事前に全体の流れを把握しておくことで、手続きをスムーズに進めやすくなりトラブル防止にもつながります。ここからは、相続不動産を売却する際の基本的な手続きと流れについてわかりやすく解説します。
相続人全員で遺産分割協議
相続した不動産を売却するには、相続財産をどのように分けるのかを確定させる必要があります。相続人が複数いる場合は遺産分割協議を行い、協議内容を文書化した遺産分割協議書を作成します。後の相続登記や売却手続きでも必要になる重要書類のため、内容に漏れがないよう慎重に整えることが大切です。
税務署に相続税を納める
相続財産の総額が基礎控除額を超える場合は、相続税の申告と納税が必要になります。申告・納税の期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。
期限を過ぎると延滞税や加算税が発生する可能性があるため、早めに財産内容を把握し、必要書類をそろえておくことが重要です。なお、不動産を売却して納税資金を確保したい場合でも、売却時期によっては申告期限に間に合わないことがあるため、余裕を持った売却計画を立てる必要があります。
法務局に相続登記を申請
2024年4月1日より相続登記は義務化されており、相続の開始を知った日から3年以内に相続登記を行う必要があります。正当な理由なく登記を行わなかった場合には行政罰が科されることがあります。
不動産を売却し、登記名義人を買主名義にする際は、相続登記を行っておく必要があります。相続登記は法務局に必要書類を提出することで申請できるため、遺産分割協議により不動産の所有者が決まった時点で申請しておいた方が良いでしょう。
売却に必要な書類の準備
相続した不動産を売却するために必要な書類を準備しましょう。代表的な必要書類は以下の通りです。
- 遺言者または遺産分割協議書
- 固定資産税評価額が分かる書類
- 登記識別情報通知書または権利証
- 相続人の関係を説明する書類
- 本人確認書類
- 土地・建物の登記簿謄本
- 公図・地積測量図
- 取得時の書類(重要事項説明書・売買契約書など)
なお、全ての書類が用意できない場合は、用意できる書類だけで構いません。不動産会社が代理で取得してくれる場合もあるため、不動産会社に相談しながら準備を進めましょう。
不動産会社に売却査定依頼
必要書類の準備と並行して、不動産会社に査定を依頼しましょう。マンションは比較物件が多く査定価格が算出しやすいですが、戸建てや土地の場合は立地や築年数、建物の状態だけでなく、再建築の可否や用途地域などによる建築制限などが価格に大きな影響を与えます。
不動産会社の中には、再建築が出来ない物件や心理的瑕疵などの難あり不動産は取り扱ってくれない可能性もあるため、1社だけで判断するのではなく、複数社に相談するのが無難です。査定価格だけを見るのではなく、販売戦略や売却スケジュール、担当者の誠実さを確認しておくことで、依頼後のトラブル防止にもつながります。
不動産会社と媒介契約締結
売却を依頼する不動産会社が決まったら、媒介契約を締結します。媒介契約には、専属専任媒介、専任媒介、一般媒介の3種類があり、それぞれ他社への重ね依頼の可否や、販売状況の報告頻度などに違いがあります。
相続不動産の売却では、価格設定や販売活動の進め方が結果を大きく左右するため、契約内容を十分に理解したうえで選ぶことが大切です。契約後は不動産会社が広告掲載や購入希望者対応を行い、本格的な売却活動がスタートします。媒介契約の種類は別の記事で詳しく解説しているので、そちらをご参考ください。

売買契約締結・物件引渡し
買主が見つかり条件面で合意できたら、不動産売買契約を締結します。契約時には売買価格や引渡し日、契約不適合責任の範囲、付帯設備の扱いなどを確認し、売主・買主双方が署名押印を行います。
残代金の受領と同時に所有権移転に必要な手続きを進め、物件を引き渡します。相続不動産の場合は、建物の状況を十分に把握しきれていないこともあるため、事前にわかる範囲の情報を整理し、買主へ適切に伝えることが円滑な取引につながります。
確定申告で税金の申告
相続不動産を売却して譲渡所得が発生した場合は、売却した年の翌年に確定申告が必要です。申告期間は原則として翌年2月16日から3月15日までで、この手続きによって譲渡所得税や住民税などが確定します。
取得費加算の特例や3,000万円控除を適用する場合も、原則として確定申告が必要となります。売却価格だけでなく、取得費や譲渡費用を証明できる資料をそろえたうえで、漏れなく申告することが重要です。
相続した不動産を売却する際の注意点

相続した不動産を売却する場合には、いくつかの注意点があります。ここからは、相続した不動産を売却する際に知っておくべき注意点を5つご紹介します。
相続登記は必ず3年以内に行う
令和6年4月1日から相続登記が義務化され、「相続等で不動産を取得したことを知った日から3年以内」に相続登記申請を行わなければなりません。この義務を怠ると、10万円以下の過料が科せられる可能性があります。
相続不動産を売却する際、相続登記を行わなければ買主に所有権移転登記を行うことも出来ないため、相続登記はなるべく早く行うようにしましょう。
小規模宅地等の特例を適用する
小規模宅地等の特例とは、適用条件を満たすことで相続税評価額を最大80%減額できる制度です。相続税の負担を大幅に軽減できる重要な節税対策といえますが、この特例は相続税の申告期限(相続開始から10か月以内)まで土地を所有していないと適用されません。
万が一相続税の申告期限前に土地を売却してしまうと、小規模宅地等の特例が適用されず、多額の相続税を納めることになる恐れがあるため、土地を売却するタイミングには注意が必要です。
特例・控除には期限が設けられている
相続不動産を売却する場合には「3,000万円特別控除の特例」や「取得費加算の特例」などの特例や控除を活用することで節税することが可能ですが、これらの特例・控除には期限が設けられています。
3,000万円特別控除の特例は、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、取得費加算の特例は、相続開始日の翌日から3年10か月以内といった期限が設定されているため、相続した不動産を売却する際は、これらの期限内に売却するようにしましょう。
特例・控除は併用できない場合がある
相続不動産の売却では、特例や控除を活用することで税負担を抑えられる可能性がありますが、組み合わせによっては併用できない場合があります。たとえば、被相続人の居住用財産(空き家)の3,000万円特別控除は、取得費加算の特例と併用できないため、どちらを適用した方が有利かを事前に比較する必要があります。
特例ごとに適用要件や期限も異なるため、自己判断で進めると思わぬ損失につながることも考えられます。節税効果を最大化するためにも、売却前に税理士や不動産会社へ相談するようにしましょう。
取得費を証明する書類は必ず保管する
相続不動産を売却する際は、被相続人が不動産をいくらで取得したかが分かる書類が必要となります。取得費が分かれば譲渡所得を正確に計算できますが、取得時の売買契約書や領収書などが見つからない場合、概算取得費として売却価格の5%しか認められず、税負担が大きく跳ね上がる恐れがあります。
不動産を購入した際の売買契約書、仲介手数料や登記費用の領収書、リフォームの請負契約書などは必ず保管しておきましょう。また、不動産を売却した際にかかる譲渡費用の領収書などの保管も欠かせません。相続時は書類整理の作業も多いため、誤って処分してしまわないよう注意し、早めに整理しておくことが重要です。
まとめ
この記事では、相続した不動産を売却する際の税金や特例について解説しました。相続不動産の売却は、不動産に関する知識だけでなく、税金の種類や計算方法、利用できる特例や控除に対する理解が必要となります。
税金の仕組みや特例の適用条件を理解せずに不動産売却を進めた場合、本来は納める必要のない税金まで納めることになりかねません。不要な税負担を避けるためにも、相続に精通した税理士や不動産会社に相談しましょう。
当社では、相続に詳しい税理士や司法書士と連携し、お客様に最適な売却プランをご提案致します。不動産の相続でお悩みがありましたら、ぜひお気軽に当社までご相談ください。
















