サブリース契約が危ないと言われる理由とは?仕組み・デメリット・トラブル事例を解説

サブリース契約は、空室リスクの回避や家賃の安定化といったメリットがある一方で、家賃保証の減額や中途解約の制限など、契約前には見えにくい落とし穴が存在しており、「サブリースは危ない」と言われることも少なくありません。
契約後に後悔しないためにはサブリースの仕組みを正しく理解し、メリットだけでなくデメリット・注意点を把握したうえで判断することが重要です。
この記事では、サブリースの仕組みや種類、メリット・デメリットをはじめ、実際に起こったトラブル事例を踏まえ、契約前に抑えておきたいポイントを解説します。
サブリース契約とは

不動産オーナーが自ら入居者を募集するのではなく、サブリース会社に物件を一括で貸し出し、代わりに一定の賃料を受け取ることができるのがサブリース契約です。
まずはサブリース契約の基本を理解し、どのような特徴や種類があるのかを整理していきましょう。
管理形態は主に3つ
賃貸経営には「サブリース」「管理委託」「自主管理」の3つの管理形態があります。それぞれでオーナーの関わり方や収益構造が大きく異なるため、特徴を正しく理解しておくことが重要です。
まずサブリースは、サブリース会社が物件を一括で借り上げ、オーナーに一定の賃料を支払う仕組みです。空室が出てもオーナーの収入は大きく変わらないため、収益の安定性が高い一方で、家賃保証額の見直し(減額)などのリスクを伴います。
管理委託は、入居者募集や家賃回収、クレーム対応などを管理会社に任せる一般的な方式です。家賃は入居状況に応じて変動しますが、専門会社に管理を依頼できるため、手間を抑えつつ適切な運営が期待できます。管理手数料は発生するものの、収益性と効率のバランスが取りやすい点が魅力です。
自主管理は、入居募集・契約・家賃回収・トラブル対応まで、すべてをオーナー自身が行う方法です。管理費が不要なため収益性は高まりますが、専門知識や時間が求められ、初心者には難易度が高い管理形態といえます。
サブリース契約の種類
サブリース契約には、「賃料固定型(家賃保証型)」と「実績賃料連動型(パススルー型)」の2種類があります。
賃料固定型は、サブリース会社があらかじめ定めた一定額の賃料をオーナーへ支払う方式で、空室があっても収入が安定しやすい点が特徴ですが、保証賃料の見直し(減額)が行われるケースもあり、契約前に条件を確認することが重要です。
実績賃料連動型は、実際の入居状況や家賃収入に応じてサブリース会社から支払われる賃料が変動する方式で、収益性は高くなる場合があるものの、空室リスクをオーナーも一定程度負う点に注意が必要です。
マスターリース契約との違い
マスターリースは、物件全体を一括で借り上げる仕組みを指し、サブリースはその一部として「転貸(又貸し)」を前提とした運用方式を指す言葉として使われることが多いです。
一般的には、オーナーとリース会社が結ぶ一次契約をマスターリース、その後リース会社が入居者へ転貸する二次契約をサブリースと呼び、両者を総称して「一括借上げ」と説明されることもあります。
厳密には契約構造を示す用語であり、家賃保証の有無やリスクの範囲といった具体的な条件は、個々の契約内容によって異なる点に注意が必要です。
サブリース契約の仕組み
サブリース契約の最大の特徴は、「オーナーと入居者が直接賃貸契約を結ばない」という点にあります。一般的な管理委託では、オーナーと入居者が賃貸借契約を締結し、管理会社はあくまで管理業務を代行する立場にとどまります。そのため、家賃収入は入居状況によって変動し、空室リスクはオーナー自身が負うことになります。
一方、サブリース契約では、オーナーはサブリース会社とサブリース契約を締結します。サブリース会社はオーナーから物件を丸ごと借り上げ、代わりに「サブリース賃料」と呼ばれる一定の金額をオーナーへ支払い、サブリース会社は入居者と賃貸借契約を結び、家賃収入を得る仕組みとなっています。

サブリース契約のデメリット

サブリース契約は、家賃収入の安定化や管理負担の軽減といったメリットがある一方で、契約後に想定していなかったリスクが表面化するケースも多く見られます。
家賃保証額の減額や中途解約の制限、修繕費の負担など、表面的な説明だけでは見落としやすいデメリットが潜んでいます。ここでは、契約前に必ず押えておきたいサブリース契約の注意点を詳しく解説します。
収益性が低い
サブリース契約では、オーナーが得られる収入は一般的な賃貸経営と比較して低くなる傾向があります。サブリース会社は転貸によって利益を確保する必要があるため、オーナーへ支払う賃料は市場家賃より10〜30%程度低く設定されるケースが多く見られます。
契約期間中にサブリース賃料が見直される可能性もあり、長期的な収益性がさらに低下するリスクも抱えています。短期的には安定収入を得られるものの、長期的に高く安定したキャッシュフローを確保したいオーナーにとっては、サブリース契約が大きな足かせになる可能性もあります。サブリース契約を検討する際は、安定性だけでなく、将来的な収益シミュレーションを行い、一般管理方式との収益差を見極めることが重要です。
家賃保証の見直しリスク
サブリース契約で特に注意すべきなのが、「家賃保証は永続的に続くわけではない」という点です。多くのサブリース契約では、契約当初に高めの保証賃料が提示されることがありますが、一定期間が経過すると見直しが行われ、保証額が減額されるケースが少なくありません。
減額幅は市場家賃の下落だけでなく、サブリース会社の経営状況によっても左右されるため、オーナーの意向が反映されない可能性が高くなります。契約書には賃料見直しのタイミングや条件が記載されているケースが多いため、必ず事前に確認し、「いつ・どの程度・どんな理由で」減額される可能性があるのかを十分理解しておくことが重要です。
オーナーからの解約が難しい
サブリース契約では、オーナー側から契約を解約したい場合でも自由に解約できないケースが多くなります。一般的な賃貸借契約と同様に、サブリース会社には借主としての権利が発生するため、オーナー側の一方的な解約は認められず、「正当事由」が求められます。
多くのサブリース契約では、中途解約に関する厳しい条件が設けられており、中途解約時には多額の違約金が発生するケースも少なくありません。サブリース契約は長期にわたり法的拘束力を持つため、「思っていた内容と違ったから解約したい」という理由では原則として応じてもらえません。契約前には必ず解約条件を確認し、柔軟性の有無を見極めることが重要です。
修繕費はオーナー負担
サブリース会社はあくまでは借主のため、建物の修繕費は原則としてオーナーが負担することになります。外壁塗装や屋上防水、設備更新といった大規模修繕はもちろんのこと、退去時の原状回復費用や設備故障の修理費など、細かな修繕についてもオーナー負担とされるケースが多く、多額の修繕費用によって収益シミュレーションに大きな影響を与えることも少なくありません。
サブリース会社によっては、修繕を怠るとサブリース会社から賃料の減額や契約更新拒否を求められる可能性もあります。サブリース契約は手間をかけずに不動産経営ができると思われがちですが、建物の維持管理責任はあくまでオーナー側にある点を理解し、契約前に修繕の負担範囲をしっかり確認しておきましょう。
サブリース賃料の免責期間
サブリース契約には、サブリース会社からの賃料支払いが開始されない「免責期間」が設けられている場合があります。これは主に新築物件の入居者募集期間や、退去後の入居者が入れ替わるタイミングに設定されることが多く、通常1〜6か月程度に設定されます。免責期間中は家賃収入を得ることができないため注意が必要です。
サブリース会社としては、入居者募集や運営準備にかかる期間をカバーするための仕組みですが、オーナーにとってはキャッシュフローが一時的に悪化するデメリットとなります。免責期間中でも借入返済は発生するため、契約前に免責期間の内容について必ず確認し、返済計画に問題がないか慎重に判断しましょう。
入居者を選ぶことができない
サブリース契約では入居者との賃貸借契約はサブリース会社が行うため、オーナーは入居者を選ぶことができません。一般管理方式であれば入居審査はオーナー自身が行い、トラブルリスクの低い入居者を選ぶことが可能ですが、サブリース契約では入国審査はすべてサブリース会社に任せることになります。
サブリース会社が空室を埋めるために審査基準を甘くするケースもあり、結果として物件のトラブルリスクが高まる可能性もあります。入居者の属性によっては物件全体のイメージが低下し、将来的な賃料下落につながることも考えられるため、契約前にサブリース会社の審査基準や運営方針を確認しておくことが重要です。
サブリース契約のメリット

サブリース契約はデメリットばかりが注目されがちですが、オーナーの賃貸経営にかかる負担を大きく軽減できるなど、さまざまメリットが存在しています。
空室リスクを抑えながら安定的に賃料収入を確保したいオーナーにとっては、有効な選択肢となる場合もあるため、ここではサブリース契約のメリットについて詳しく解説します。
管理を全て任せることができる
サブリース契約の大きなメリットの一つが、賃貸経営に必要な業務をほぼすべてサブリース会社に任せられる点です。入居者募集や契約手続き、家賃回収、クレーム対応、退去時の立ち会い、原状回復の手配まで、通常はオーナーが負担する多くの業務を代行してくれるため、日々の管理に時間を割く必要がありません。
本業が忙しいオーナーや、遠方の物件を所有している場合には、管理負担の軽減は大きな魅力となります。専門会社が運営を行うことで、入居募集のスピードやトラブル対応の質が向上することも期待できます。手間を減らしながら安定的に物件を運用したいオーナーにとっては、大きなメリットといえます。
安定した収入を得ることができる
サブリース契約では、空室が発生しても一定の賃料を受け取ることができるため、収入が安定しやすくなります。一般的な賃貸経営では入居者の入れ替わりによって収入が大きく変動しますが、サブリース契約ではサブリース会社が毎月決まった金額をオーナーに支払ってくれるため、空室リスクをほとんど気にする必要がありません。
市場環境が変動しやすいエリアや、賃貸需要に不安がある場合でも、空室による赤字リスクを軽減できるのは魅力的です。返済計画が立てやすく、将来的なキャッシュフローを安定させたいオーナーにとっては大きなメリットといえるでしょう。
広告費や仲介手数料を節約できる
通常の賃貸経営では、入居者募集を行うたびに広告費や仲介手数料が必要となり、物件の収益性に影響を与えることがありますが、サブリース契約では、入居者募集はサブリース会社が行うため、オーナーが広告費や仲介手数料を負担する必要がないケースが一般的です。
サブリース会社は自社のネットワークや広告戦略を活用して入居者を確保するため、募集スピードが高まることも期待できます。入居者募集にかかる手間やスケジュール調整も不要となるため、オーナー自身が営業活動に関わる必要もありません。入居者募集に必要な費用や労力を節約できるのは、本業で忙しいオーナーにとっては嬉しいメリットといえるでしょう。
サブリース契約のトラブル事例

サブリース契約は手間を減らし、安定した収入を得られる仕組みとして利用されていますが、契約後に思わぬトラブルに発展するケースも少なくありません。オーナーとサブリース会社との間で起こるトラブルは「サブリース問題」と呼ばれ、一時期大きな社会問題にもなりました。
ここでは、サブリース契約で発生しやすい代表的なトラブル事例を取り上げ、サブリース問題について詳しく検証し、どのような点に注意すべきかを見ていきましょう。
サブリース会社の倒産による賃料不払い
サブリース契約では、オーナーはサブリース会社からの賃料支払いによって収入を得ているため、サブリース会社が経営悪化や倒産に陥った場合、数カ月ほど賃料を受け取れなくなる可能性があります。賃料が支払われない間も借入金の返済は行わなければならないため、オーナーに資金的余裕がない場合は自己破産に陥ってしまうことも考えられます。
倒産後も、入居者との直接契約への切り替えや新たな管理会社の選定など、オーナー自身が対応しなければならないことは多岐にわたるため、物件運営に大きな影響が生じます。契約前には、会社の財務基盤や運営実績なども含めて、相手先の信用力を確認しておくことが重要です。
家賃保証の大幅減額をめぐるトラブル
サブリース契約で最も多いトラブルの一つが、家賃保証額の大幅な減額をめぐる問題です。契約当初は「30年間一括借上げ」「空室でも家賃保証」などの魅力的な説明を受けていても、数年後に「近隣相場の下落」や「物件の競争力低下」などを理由に、サブリース会社から家賃保証の減額を求められるケースがあります。
仮に「契約から10年間は減額請求をしない」といった不減特約を締結していても、法律的には借主であるサブリース会社の方が立場が強くなるため、借主が不利になる特約は借地借家法で無効となり、サブリース会社の賃料減額請求権が認められてしまいます。
不当な大幅減額は認められませんが、現時点のサブリース賃料が近隣相場と比較して明らかに高い場合には減額請求が認められてしまう可能性があるため、契約前に近隣の家賃相場を調べておくことが重要です。
サブリース契約解除に関するトラブル
サブリース契約を結んだものの、「想定していた条件と違った」「収益性が低すぎる」といった理由から、オーナーが契約の解約を希望するケースもありますが、サブリース契約ではサブリース会社が借主の立場となるため、オーナー側から一方的に契約を解除することはできません。
サブリース契約を解除するために正当事由が求められたり、高額な違約金が設定されている場合もあり、思うように解約できずトラブルに発展することがあります。契約前には、オーナー側からの中途解約の条件や手続き、違約金の有無や金額などを必ず確認しておきましょう。
修繕義務に関する費用負担トラブル
サブリース契約では、「建物の維持管理責任は誰がどこまで負うのか」という点が曖昧なまま契約してしまうと、修繕費用をめぐるトラブルにつながりやすくなります。オーナーとしては、「サブリース会社が一括で借りているのだから、修繕も任せられる」と考えていても、契約書上は大規模修繕や設備更新、原状回復費用などの多くがオーナー負担となっているケースが少なくありません。
築年数の経過に伴い発生する外壁や配管、設備の劣化などは多額の費用がかかることがあり、当初の事業計画が大きく狂ってしまうリスクがあります。必要な修繕を行わない場合、サブリース会社から賃料減額や契約更新拒否を求められることもあるため、契約前に修繕費の負担範囲や基準、実際の手配フローについて確認しておくことが重要です。
入居者マナーの低さによるトラブル
サブリース契約では、入居者の募集・審査・契約はサブリース会社が行うため、オーナーは入居者の属性やマナーについて直接関与できないケースが一般的です。空室を減らすことを優先するあまり審査基準が甘くなり、騒音トラブルやゴミ出しルール違反、共用部の使い方など、近隣住民や入居者とのトラブルが発生しやすくなります。
入居者トラブルが続くことで物件の評判が悪化し、退去の増加や賃料下落につながる可能性があります。物件の資産価値や将来の収益性に影響が出るため、サブリース会社の入居審査の方針やトラブル対応の体制は事前に確認しておく必要があります。可能であればクレーム対応の実績やルール作りについて具体的にヒアリングし、安心して任せられるかを見極めることが大切です。
信頼できるサブリース会社の選び方

信頼できるサブリース会社を選ぶには、契約内容の透明性はもちろんのこと、賃料見直しや中途解約に関する条件、修繕負担の範囲などを確認して総合的に判断する必要があります。
会社の財務状況や実績を確認する
サブリース契約は、毎月の賃料をサブリース会社から受け取る構造のため、会社の経営状況が不安定だと賃料遅延や減額、最悪の場合は倒産によって収入が途切れるリスクがあります。契約前に決算公告(上場企業なら有価証券報告書)で売上や利益、自己資本比率などを確認し、債務超過の懸念がないかを把握しましょう。
運営戸数や管理実績、事業年数、主要取引先、過去の行政処分・訴訟トラブルの有無も重要です。管理戸数だけでなく、入居率の推移や賃料改定の頻度などまで確認できると安心材料になります。
契約条件に合理性・根拠があるか
信頼できる会社は、提示する契約条件に合理性・根拠を持っています。仮に保証賃料が相場より極端に高い場合、契約後に大幅な減額が起きる可能性が高くなります。契約前に、保証賃料の算定方法(近隣相場・募集賃料・想定空室率・管理コストなど)を具体的に説明してもらいましょう。
賃料見直しの時期と条件、免責期間、修繕負担の範囲、中途解約の要件(違約金の有無や金額)など、オーナー側に対する負担が極端に大きくなっていないかを確認するとともに、収支シミュレーションに合理性があるかを確認することが重要です。
SNSや口コミで会社の信頼性を確認する
サブリース契約を締結する際、多くの人が「営業担当者の対応」で判断しますが、営業担当者の対応だけで会社の良し悪しを判断するのは危険です。営業担当者は契約を取るために良い対応をするのが一般的ですが、大事なことは「何かが起きたときに”会社”がどのような対応を取ってくれるか」です。
公式サイトの情報だけでなく、SNSや口コミなどでユーザーの声を確認し、トラブル発生時に会社がどのような対応を取ってくれるかを確認しておきましょう。ただし、口コミは主観的な感想だったり、同業者のイタズラが混ざっていることも多いため、実際に利用したユーザーによる口コミかを見極めることが重要です。
まとめ
サブリース契約は、空室リスクを抑えて賃料収入を安定させられる一方で、保証賃料の見直し(減額)や免責期間、修繕費の負担範囲、中途解約の難しさなど、契約後にトラブルに発展しやすいリスクが存在します。
サブリース会社の経営悪化・倒産によって賃料不払いが起こる可能性があるため、サブリース会社の経営状況などの確認を行うとともに、契約条件の合理性や根拠、賃料改定の条件、解約条項、修繕負担、入居者審査の方針まで確認し、管理委託など他方式とも比較したうえで判断しましょう。メリットとデメリットを正しく理解し、収支シミュレーションと契約内容の精査を行うことが、サブリースで失敗しないために重要なポイントです。
当社では、比較的リスクの低いファミリー区分マンション投資をはじめ、アパートなどの一棟収益なども数多く取り扱っております。不動産投資にご興味のある方は、気軽にお問い合わせください。
















