ベタ基礎と布基礎の違いとは?それぞれのメリット・デメリットを断面図を用いて解説

マイホームの新築や購入を考える際、ついつい建物の間取りやデザインに目が向いてしまいがちですが、建物の基礎部分の構造や種類について理解しておくことはとても重要です。
家づくりにおいて基礎工事は欠かせない工程であり、基礎の強度がそのまま建物の強度に大きく影響します。非常に重要な構造部のため、マイホームの新築や購入を進める前に基礎のことをしっかり理解しておきましょう。
この記事では、戸建て住宅でよく使われている「布基礎」と「ベタ基礎」の特徴やメリット・デメリットとともに、それぞれを比較する際のポイントについて解説します。
そもそも住宅における基礎とは?

建物を新築するためにはまず基礎工事によって基礎を作り、その上に柱を立てて建物を建てていきます。基礎は主に鉄筋とコンクリートで作られ、建物全体を支えているとても重要な部分です。
ここからは住宅における基礎の目的と役割、基礎の種類について詳しく解説します。
住宅における基礎の目的と役割
住宅の基礎は、建物全体の安定性と耐久性を確保するために非常に重要な役割を持っています。建物の重量や荷重を地盤に伝達することで建物がしっかりと固定され、不同沈下や傾きを防止します。
また、基礎は湿気や水の侵入を防ぐとともに適切な換気を行うことで建物内部を保護し、土台や柱などの木材が腐食するのを防ぐ役割も果たしています。木材へのダメージは建物の存続にかかわるため、建物が良好な状態を保つのに役立ちます。
適切に設計・施工されることが建物の長寿命化や快適で安心な生活に繋がるため、基礎の種類や設計は地域の気候条件や土壌の状況に合わせて考える必要があります。
建物に使われる基礎は全部で5種類
現在建物に使われている基礎は主に「杭基礎」と「直接基礎」の2種類に分かれており、そこから細かく分けて5種類の基礎が存在しています。

引用元:ALT Inc.
杭基礎は、マンションやビルといった大型の建物を建築する場合や、地盤沈下地帯や液状化現象を起こしやすい土地で用いられます。地盤が固い地層まで杭を打ち込むことで強度を高めますが、杭基礎だけでは接地面積が狭くなり不安定になるため、布基礎やベタ基礎と併用するのが一般的です。
独立基礎は主要な柱の下にのみ基礎を作りますが、接地面積が狭く安定性に欠けるため建物本体の基礎には使われず、ウッドデッキや玄関ポーチで採用されています。
ベタ基礎は全体をコンクリートで覆う基礎です。住宅を面で支えることができるため安定性が高いのが特徴です。布基礎は外壁や柱などの主要な部分のみに作られる基礎で、住宅を点と線で支えるため地盤強度が弱い土地に採用すると不同沈下が起きやすくなります。
深基礎もベタ基礎の一種です。道路と高低差がある土地に建築する場合や、地下室のある住宅を建てる場合など、さらに高い安定性を要求される際に採用されます。ベタ基礎よりもさらに深いところまで基礎を設けるため、高い安定性を発揮します。
戸建て住宅では「布基礎」か「ベタ基礎」
基礎には全部で5種類ありますが、戸建て住宅で使われている基礎は主に「布基礎」か「ベタ基礎」のどちらかです。以前までは布基礎が多く使われていましたが、最近ではベタ基礎が主流となっています。
布基礎とベタ基礎の大きな違いは、基礎全体を鉄筋コンクリートで覆うかどうかです。ベタ基礎は全体を鉄筋コンクリートで覆うため面で建物を支えることになりますが、布基礎は建物外周や柱の部分のみに鉄筋コンクリートを配置するため、点と線で建物を支えることになります。
布基礎とベタ基礎のどちらにも特徴やメリット・デメリットがあるため、そのあたりについてここから詳しく解説していきます。
布基礎の特徴とメリット・デメリット

布基礎は、日本の住宅で昭和初期ごろから使われている歴史ある基礎工法です。平成初期以前までに建てられた住宅の多くで布基礎が採用されています。建物の外側から見ただけではあまり判断できませんが、構造的にはベタ基礎と大きな違いがあります。まずは布基礎について詳しく解説していきます。
布基礎の構造と特徴

布基礎は、逆T字をした形状の鉄筋コンクリートが連続して設けられています。建物の外周はコンクリートで囲っているため、見た目だけではベタ基礎と区別が付きにくいですが、建物を支えるのは基礎が立ち上がっている部分のみなので、建物の荷重を「点と線」で支えることになります。
以前までは基礎が立ち上がっていない部分は土が丸出しの状態でしたが、最近では立ち上がり部分以外は地面の上に防水シートを敷き、その上に防湿コンクリートを施工するのが主流となっています。
布基礎のメリット
建築コストを抑えられる
布基礎はベタ基礎と比べて、鉄筋を組む箇所や使用するコンクリートの量が少ないためコストを抑えることができます。基礎工事に要する工程も少ないため、工事日数を短縮することで人件費を削減でき、建築コストを抑えられます。
部分的に強度を高められる
布基礎の基礎は、ベタ基礎と比べて深くまで入れるため、部分的にはベタ基礎よりも強度を高められる場合があります。ベタ基礎は根入れの底から立ち上がりの天端までが約500mmなのに対し、布基礎の場合は約650mmほどになります。縦に長い分、上からの荷重に強くなるため、鉄骨系のプレハブ住宅には布基礎が多く使われます。
布基礎のデメリット
耐震性でベタ基礎より劣る
布基礎は点と線で建物全体を支えるため、建物の荷重を分散できず一部分に集中しやすくなります。そのため、地盤の強度が弱いと建物の荷重が偏り、不同沈下によって建物が傾いたり歪みが生じる可能性があります。傾きや歪みが生じている建物は、地震が発生した際に倒壊するリスクが高くなるので注意が必要です。
シロアリ被害に合いやすい
布基礎は隙間が大きく地面がむき出しになっている部分があるため、シロアリが侵入しやすいという特徴があります。防蟻処理がされた木材を使用したり防蟻シートを敷くことが重要です。また、地面に含まれる水分(湿気)が建物部分まて上がり、湿気が土台や柱を腐食させることにも繋がるため、防湿シート等での対策が必要となります。
ベタ基礎の特徴とメリット・デメリット

ベタ基礎は、1990年代の後半から日本の住宅で採用され始め、2000年を過ぎたあたりからはほとんどの住宅の基礎にベタ基礎が採用されています。基礎部分を全てコンクリートで覆うことで、布基礎のデメリットを補っています。ここからは、ベタ基礎の特徴とメリット・デメリットを解説していきます。
ベタ基礎の構造と特徴

ベタ基礎は、住宅の底面全体を鉄筋コンクリートで覆われています。立ち上がっている部分と床部分が一体となっており、荷重を「面」で支えることができるのが大きな特徴です。建物の荷重を分散できるため、地盤が比較的弱い場所でも安定性を保つことができます。
ベタ基礎では、通気口の代わりに基礎全周に基礎パッキンを設けることで、部分的に強度の差が生じないように工夫されています。
なお、基礎パッキンを用いることをキソパッキン工法と呼びます。(基礎パッキン工法について別記事で詳しく解説しています。)

ベタ基礎のメリット
耐震性に優れ不同沈下が起きにくい
ベタ基礎は建物を「面」で支えることができるため、建物の荷重をあらゆる方向に分散することで優れた耐震性を備えています。また、布基礎では建物の一部だけが重かったり、地盤の弱いところがあると不同沈下を起こす可能性がありますが、ベタ基礎は底面全体で建物を支えるため不同沈下を起こしにくいというメリットがあります。
湿気やシロアリ被害に合いにくい
ベタ基礎は、地面全体を鉄筋コンクリートで覆っているため、シロアリや地中からの湿気の侵入を防ぎやすい構造になっています。建物がシロアリによって損傷を受けたり、湿気による木材の腐食を減らすことができるため、建物の高寿命化に繋がります。
ベタ基礎のデメリット
建築コストが高くなる
ベタ基礎を作るには、布基礎よりも多くの鉄筋やコンクリートを使用するため、多くの材料費が必要となります。布基礎と比べて作業時間が長くなることで人件費が高くなるほか、布基礎よりも多くの面積を掘り起こすために多くの処分費がかかります。基礎の強度を出すために、鉄筋の量を増やしたりコンクリートを厚くすると、さらに建築コストは高くなります。
寒冷地には向いていない
気温が氷点下になるような寒冷地では、地盤が凍結してしまうためベタ基礎は向いていません。地盤が凍結することで基礎が上に押し上げられ、建物に損傷を与えてしまう可能性があります。寒冷地では凍結が起こる深さ(凍結深度)の基準が定められており、その基準より深い位置に基礎を作ることで解決できる場合がありますが、その分多くの建築コストが必要となるため、寒冷地では布基礎が採用されるケースが多くなっています。
布基礎とベタ基礎を比較!どちらを選ぶべき?

布基礎とベタ基礎の特徴について解説しましたが、マイホームを新築する際には自分のお家がどちらの基礎に適しているか判断できずに悩むこともあるでしょう。そこでここからは、布基礎とベタ基礎を比較していきたいと思います。
コスト面での比較
一般的には使用する鉄筋やコンクリートの量が少ない方が安く施工することができるため、布基礎の方がコスト面では有利となります。しかし、最近ではベタ基礎が主流となっていることから、地域によっては布基礎を施工できる業者が少なく布基礎の方が高くなってしまうケースもあります。
北海道などの寒冷地では、地面が凍る部分よりも深い位置まで基礎の底面を配置しなければいけないため、ベタ基礎と布基礎でコスト面に大きな差が生じますが、寒冷地でない地域では布基礎とベタ基礎でそれほど差が生じない場合があるため、ハウスメーカーや工務店の見積もりを見て判断しましょう。
耐震性での比較
基礎だけで耐震性を考えると、建物の底面全体を鉄筋コンクリートで覆うベタ基礎が優位ですが、布基礎であっても基礎の根入れを深くしたり、フーチング(底盤)の幅を広くすることで耐震性を高めることができます。
また、耐震性は基礎だけでなく、地盤の強度や建物全体の耐震性を上げる等、総合的に耐震性を高めていくことが重要です。建物の強度を上げるために、木造住宅の構造(工法)を見直したり、耐力壁の配置や数を検討して、総合的に耐震性を高めていきましょう。
シロアリや湿気対策での比較
建物の底面全体が鉄筋コンクリートで覆われているベタ基礎は、地面に面していないためシロアリの侵入を防ぎやすいとされていますが、換気の役割を果たす基礎パッキン部分から侵入されてしまう可能があります。そのため、防蟻処理が施されている木材を使用したり、定期的に専用の薬剤を散布して防蟻処理を行うことが重要です。
布基礎であっても、防湿シートや防湿コンクリートを施し、薬剤による防蟻処理を行うことでシロアリ被害を抑えることが可能です。ベタ基礎の場合は最低でも10年に1度、布基礎の場合は3年に1度は防蟻処理を行うようにしましょう。
工期や工程での比較
基礎作りの工程としては、まず地盤調査を行って土を掘削工事を行います。そこから地面の上に砕石を入れ、防湿シートと捨てコンクリートを流した後、鉄筋と型枠を組んでコンクリートを流していきます。
ベタ基礎の方が鉄筋コンクリートを作る範囲が広くなるため若干工期が長くなりますが、それほど大きな違いは生じないため、コスト面や耐震性を優先して基礎を考える方が良いでしょう。
まとめ
この記事では、住宅における基礎の目的と役割をはじめ、戸建て住宅でよく使われている「布基礎」と「ベタ基礎」の特徴やメリット・デメリットとともに、どちらを選べば良いかの比較をご紹介しました。
地盤が弱ければどれだけ強い建物を作っても意味がないため、しっかりと地盤調査を行い、地盤が弱い場合は適切な地盤改良工事を行う必要があります。基礎は建物の重量や荷重を地盤に伝達する役割を持ち、建物全体の安定性や耐久性に大きく影響を与えます。長期間に渡って建物の状態を保ち、不同沈下や建物の傾きを防止するためには、地域や自分に合った基礎を選ぶことが重要です。
最近ではベタ基礎が主流となっていますが、建物の構造や地域によっては布基礎が適している場合があるため、建物構造に詳しく、地域の特性を理解したハウスメーカーや工務店に相談するのがおススメです。