BELS(ベルス)とは?評価書を取得するメリット、補助金や申請にかかる費用を解説

BELS(ベルス)とは?評価書を取得するメリット、補助金や申請にかかる費用を解説

現在世界中で温暖化を防ぐための対策が打たれており、日本でも2050年のカーボンニュートラル(脱炭素社会)の実現に向けてあらゆる取り組みがされています。

我が国の発電電力は火力発電が7割以上を占めており、化石燃料を燃やす過程で大量の二酸化炭素を発生させてしまうため、住宅の省エネルギー性を高め、使用する電気やガスを減らすことが重要です。

BELSは住宅に限らず、建築物全般の省エネルギー性を図る指標の一つです。BELS評価書を取得することで様々なメリットがあるため、補助金や税制優遇、申請費用などをしっかり理解しておきましょう。

目次

BELS(ベルス)とは?

BELS(ベルス)とは?

BELSとは、「Building Housing Energy Efficiency Labeling System」の略称で、建物の省エネ性能を第三者機関が評価し認定する制度のことです。一般社団法人住宅性能評価・表示協会によって運営されています。

以前までは商業用途の建築物が評価対象でしたが、平成28年(2016年)4月から住宅も評価対象に加わり、建築物省エネ法第7条に基づく建築物の省エネルギー性能を表示する制度として運用が開始されました。

新築住宅だけでなく既存住宅についても評価・表示が可能なため、建築物全般の省エネルギー性を判断する一つの指標として昨今注目を集めています。

BELSで評価・表示される性能

BELSでは、建築物の省エネルギー性を見える化するために、BELS登録機関が客観的に評価し、一次エネルギー消費量の基準値からの削減率を5段階の★マークで評価します。

BELSで評価される性能
  • 一次エネルギー消費量
  • 外皮性能

星の数は省エネルギー性能指標である「BEI値」を用いて計算されます。BEI値は「基準一次エネルギー消費量」に対する「設計一次エネルギー消費量」の割合を表すため、数値が小さいほど省エネルギー性能が高いことを示します。

BEI値の計算式

BEI値 = 設計一次エネルギー消費量/基準一次エネルギー消費量

星の数省エネ基準
BEI ≦ 0.80
0.80 < BEI ≦ 0.85
0.85 < BEI ≦ 0.90
0.90 < BEI ≦ 1.00
1.00 < BEI

また、外皮性能はUA値で表示され、地域区分に応じた基準値に適合しているか評価されます。平均気温等ごとに全国を8つの地域に分け、それらの地域に適したUA値の基準値が設定されています。

BELSとZEHの違い

ZEHとは、「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略称で、BELSと同様、住宅の省エネルギー性能を示す指標の一つです。ZEHでは「創エネ」と「省エネ」の両方から、家庭で使用するエネルギー収支をゼロ以下にする家づくりを目指します。

BELSとZEHでは、評価する内容や基準が異なります。BELSでは、一次エネルギー消費量の20%程度削減を目指すのに対し、ZEHでは、創エネを含み一次エネルギー消費量の100%削減を目指します。

ZEHについては別の記事で詳しく解説しています。詳しく知りたい人はそちらの記事をご参考ください。

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BELS評価書は既存住宅でも取得可能

BELS評価証は、既存住宅でも取得可能なため、既存住宅の省エネ性能が気になる場合は、BELS評価証の取得を検討しても良いかもしれません。

ただし、BELSの申請には図面等の書類作成が必要となり、書類作成費用や省エネ計算代行費用、審査費用などに高額の費用が必要となります。

また、築古住宅やメンテナンスがされていない住宅では、期待通りの評価を受けられない可能性があり、BELSのメリットを十分に享受できない場合があるので注意が必要です。

BELS申請のタイミング

BELS評価は、建築物の着工・竣工のいずれのタイミングを問わずいつでも申請が可能です。新築住宅の場合は、設計が完了し、サッシ・ガラス・断熱材などの種類が決まり次第、BELS申請ができます。

建築計画に変更があるとBELSの申請にも影響を与える可能性があるため、後々の手間を考えると全ての計画が完了した時点で申請するのが効率的です。

BELS評価書を取得するメリット

BELS評価書を取得するメリット

BELS評価書の取得には一般的な住宅と比べて多くの書類が必要になるため、多くの時間と費用がかかります。また、住宅の省エネ性能を上げるために建築コストが高くなる傾向にありますが、その反面、BELS評価書を取得することで多くのメリットを受けられます。

BELS評価書を取得するメリットは主に以下の5つが挙げられます。

BELS評価書
  1. 5段階表示で省エネ性能が分かりやすい
  2. 信頼性の高い第三者評価が受けられる
  3. 快適な住環境で生活できる
  4. 毎月の光熱費を節約できる
  5. ZEH住宅に対する補助金に活用できる

5段階表示で省エネ性能が分かりやすい

BELSでは、建築物の省エネ性能を☆マークの数で表示するため、建築に対する専門知識がなくても視覚的に省エネ性能を把握することができます。

省エネ性能は見た目で判断することが出来ないため、性能の良し悪しを判断するのが難しいですが、分かりやすく5段階で表示してくれるのは嬉しいポイントです。

信頼性の高い第三者評価が受けられる

BELSの評価は一般社団法人住宅性能評価・表示協会に登録された第三者機関が行います。国が定める建築物エネルギー消費性能基準に基づくため、信頼性の高い基準と言えます。

ハウスメーカーや工務店等が独自に採用している自社基準での評価と異なり、各社同じ基準と方法で評価が行われるため信頼性が高く、安心して省エネ性能を把握することができます。

快適な住環境で生活できる

断熱性能(外皮性能)の高い住宅に住むことで、暑い季節でも涼しく、寒い季節でも暖かい室内を維持することができるため、年間を通じて快適な住環境で生活できます。

室内が外気温の影響を受けにくくなり、各居室間の気温差も小さくなることから、トイレや入浴時の不快感を軽減するだけでなく、ヒートショック等の予防にも繋がります。

毎月の光熱費を節約できる

省エネルギー性の高い住宅では、窓や床、壁から逃げ出す熱量が少なく、効率よく冷暖房を効かせることができるため、毎月の光熱費を節約できます。

省エネエアコンやエコキュートと併用することで更に光熱費を節約できます。石油価格の高騰や社会情勢の影響から、電気料金・ガス料金は高騰傾向にあるため、毎月の光熱費を節約できるのは大きなメリットと言えるでしょう。

ZEH住宅に対する補助金に活用できる

省エネ住宅の普及を促進するためにあらゆる補助金制度が設けられています。BELS認定を受けることで一定の断熱性能を有していることが証明されるため、補助金を利用できる可能性があります。

ZEH住宅の購入・建築には「ZEH支援事業」という補助金制度が用意されており、申請の条件としてBELS認定を受けていることが条件となっています。

ZEH支援事業の補助金では太陽光発電等による創エネが必要ですが、都市部の狭小地や多雪地域では創エネの要件が除外されており、比較的簡単に補助金を受けられる可能性があります。

また、子育てエコホーム支援事業では、BELS評価書でZEHレベルの省エネ性能を有していることを証明し、補助対象になる場合があるので事前に確認しておきましょう。

BELSに関係する補助金・税制優遇

BELSに関係する補助金・税制優遇

BELS評価書を取得し、省エネ住宅の認定を受けることで、国からの補助金や税制優遇を受けられる可能性があります。BELSに関係する補助金・税制優遇には主に以下の3つが挙げられます。

BELSに関係する補助金・税制優遇
  1. ZEH支援事業補助金
  2. 子育てエコホーム事業補助金
  3. 住宅ローン控除(減税)

なお、同時に複数の補助金を受け取ることはできないため、金額の高い補助金や受付期間中の補助金に限定して申請することになります。

また、各補助金や税制優遇の対象となる土地や住宅の大きさ等に要件が定められているため、必ず各公式ホームページで詳細を確認しておきましょう。

ZEH支援事業補助金

ZEH住宅は、住宅の外皮性能と省エネ性能を高め、一次エネルギー消費量を20%削減するとともに、太陽光発電システム等でエネルギーを創り出し、一次エネルギー消費量の100%削減を目指すものです。

ZEHで定められている外皮性能と省エネ性能による一次エネルギー消費量の削減率は、BELSで定められている基準と同等であるため、ZEH支援事業補助金の申請時にBELS取得が要件とされています。

ZEHには、いくつかの種類があり、通常のZEHとZEH +で補助金額に違いがあります。

ZEHの種類補助金額(※2023年度)
ZEH55万円
ZEH +100万円

BELSはあくまで省エネ性能に特化した評価制度のため、BELS評価書だけではZEH住宅の認定を受けることはできませんが、都心部や寒冷地等で太陽光発電による創エネルギーが実質的に不可能な地域に限っては、創エネの要件を満たさずにZEH住宅の認定を受けられる場合があります。

BELS評価書を取得している場合は、比較的簡単にZEH支援事業補助金を受け取れる場合があるので、事前にハウスメーカーや工務店に相談してみましょう。

子育てエコホーム支援事業補助金

2023年9月28日に受付を終了した「こどもエコすまい支援事業」に代わって、2024年度から新たに「子育てエコホーム支援事業」の運用が開始されました。

国土交通省が主体となり、2050年カーボンニュートラルの実現を図るために、子育て世帯や若者夫婦世帯が高い省エネ性能を有する新築住宅の取得や、住宅の省エネ改修工事を行う際に補助金が支給されます。なお、自宅の省エネ改修工事を行う場合は、子育て世帯等以外も補助対象となります。

子育てエコホーム支援事業では、BELS評価書にZEHマーク又はZEH-Mマークが表示されていれば、ZEH住宅に認定されるため、一定の補助金を受け取ることができます。

世帯の属性種別上限補助金額
子育て世帯又は若者夫婦世帯新築住宅(ZEH住宅)1住戸あたり80万円
既存住宅を購入し省エネ改修工事を行う場合1住戸あたり60万円
自宅の省エネ改修工事を行う場合1住戸あたり30万円
その他の世帯自宅の省エネ改修工事を行う場合1住戸あたり20万円

子育てエコホーム支援事業の受付は2024年3月中下旬~予算上限に達するまでとなっているため、補助対象になる人は出来るだけ早く申請手続きを進めるようにしましょう。

住宅ローン控除(減税)

令和6年度から住宅ローン控除の制度内容が大幅に変更され、省エネ基準適合住宅以上の性能を有していない場合には、住宅ローン控除を受けることができなくなりました。

BELS評価書だけでは住宅ローン控除を受けることはできませんが、BELS評価書を取得し「省エネ基準に適合していることを証明する書類」を設計士に発行してもらうことで住宅ローン控除を受けられます。

新築/既存省エネ性能対象借入限度額控除期間
新築住宅
買取再販
ZEH水準省エネ住宅3,500万円13年間
省エネ基準適合住宅3,000万円
その他の住宅0円
既存住宅ZEH水準省エネ住宅
省エネ基準適合住宅
3,000万円10年間
その他の住宅2,000万円

令和6年度の住宅ローン控除では、住宅ローン残高の0.7%が最大13年間所得税から控除されます。とてもお得な制度なので積極的に活用することをおすすめします。

BELS評価書の申請にかかる費用

BELS評価書の申請にかかる費用

BELS評価書を取得するには、建築物の設計図面を元に省エネ性能を計算し、民間検査機関に審査をしてもらう必要があり、各工程ごとに費用が必要となります。

申請費用の金額は、住宅と非住宅、建築物の規模等によって異なりますが、主に3つの費用がかかります。ここからは、各費用の内容について解説します。

図面・書類作成費用(既存住宅)

建築物の外皮性能には、ガラス・サッシ・外壁・断熱材の種類、基礎構造、窓の大きさや配置等、さまざまな要素が関係しており、それらを把握するために多くの図面や書類が必要となります。

BELS申請に必要な書類の一例
  • 建物求積図
  • 配置図
  • 矩計図(断熱材の表記があるもの)
  • 基礎伏図
  • サッシ・ガラスの仕様が分かる資料
  • 換気計算書 etc

新築住宅の場合は、建築確認申請や建築時に必要な書類が多く特に問題はありませんが、既存住宅の場合は図面や書類が揃っていないことも多いため、作成に別途費用がかかります。

費用の金額は作成する図面や書類の種類によって異なりますが、数万円~数十万円の費用が必要です。

省エネ計算代行費用

BELSを申請するためには、図面や書類を元に省エネ計算を行い、外皮性能や一次エネルギー消費量の削減率を計算する必要がありますが、それらの計算はとても複雑な業務のため、申請代行会社に委託するのが一般的です。

建築物の種類や大きさによって費用の金額は異なります。一般的な戸建て住宅では十数万円の費用が相場ですが、複雑な計算が必要な建築物では費用も高額になります。

審査費用

BELS評価書を取得する際の審査は、一般社団法人住宅性能評価・表示協会に登録された民間検査会社が実施します。一戸建て住宅であれば数万円、集合住宅であれば十数万円~数十万円の費用が必要です。

各地域ごとに多くの民間検査機関が登録されており、会社ごとに費用も若干異なるため、審査を依頼する前にしっかりと費用を確認しておくことが重要です。

まとめ

この記事では、BELSの制度内容や評価される性能をはじめ、BELS評価書を取得するメリット、BELSに関係する補助金や税制優遇、申請費用について解説しました。

最近は2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、ZEHやHEAT20などあらゆる省エネ基準が定められています。BELSも省エネ基準の一つであり、BELS評価書を取得することで建築物の省エネ性能を星マークで表示され、建築に詳しくない消費者も安心して省エネ性能を把握することができます。また、季節を問わず快適な住環境で暮らすことができ、毎月の光熱費を節約できたり、補助金を活用してお得なマイホーム購入が可能になります。ただし、一方でBELSに適合させるために建築コストが高くなったり、申請に手間が費用がかかるなどのデメリットもあるため、省エネ住宅の建築やBELS申請に慣れたハウスメーカー・工務店に建築を依頼することが重要です。

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