住宅性能表示制度とは|住宅性能評価書の取得方法と費用、評価基準・メリットを解説

住宅性能表示制度とは|住宅性能評価書の取得方法と費用、評価基準・メリットを解説

新築戸建ての購入を考えている人の中には「建物の性能の違いが分からない…」と困っている人も多いのではないでしょうか?そのような人に知っておいて欲しい制度が「住宅性能表示制度」です。

住宅性能表示制度は、全国で統一されたルールに基づき住宅性能の評価を行い、住宅に詳しくない消費者でも住宅性能を的確に把握し、正当な評価や比較ができるようにする制度です。

この記事では、住宅性能表示制度の基礎知識や評価基準、メリット・デメリットを解説します。

目次

住宅性能表示制度とは

住宅性能表示制度とは

不動産会社や建築会社から「住宅性能評価を受けた住宅を購入した方が良い」と言われた人もいると思います。しかし、住宅性能評価がどのようなものか分からず悩んでいる人も多いでしょう。

住宅性能評価の必要の有無を判断するために、まずは住宅性能表示制度の簡単な概要を解説するとともに、住宅性能評価を取得する方法や費用などを解説していきます。

住宅性能表示制度の概要

住宅性能表示制度とは、平成12年4月1日施行の「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づく制度です。品確法では「良質な住宅を安心して取得できる住宅市場」を目指すことを目的に、新築住宅に対する瑕疵担保責任の10年間義務化とともに、住宅性能表示制度が制定されました。

住宅性能表示制度では、国土交通大臣が日本住宅性能表示基準という共通ルールに基づき、第三者として登録住宅性能評価機関が客観的な評価を行います。評価結果を可視化することで、良質な住宅を建てる住宅会社の増加を図るとともに、消費者が安心して住宅を購入できる住宅市場を目指します。

住宅性能評価書は2種類

第三者機関が性能評価を行った後に交付される書面を「住宅性能評価書」といいます。住宅性能評価書には「設計住宅性能評価書」と「建設住宅性能評価書」の2種類があります。

設計住宅性能評価書は、建築主の要望通りの住宅性能を有しているかを設計図書で評価を行い、建設住宅性能評価書では、設計図書の通りにきちんと施工がされているかを現場で検査して評価します。

住宅性能評価書は必ずしも両方取得する必要はなく、設計図書だけの評価で良い場合は設計住宅性能評価書のみを取得し、施工の評価もして欲しい場合は建設住宅性能評価書と併せて取得することになります。

住宅性能評価書の取得にかかる費用

住宅性能評価書を交付するための料金は評価機関ごとに異なりますが、一般的には設計住宅性能評価書のみを取得する場合には10万円ほど、建設住宅性能評価書も併せて取得する場合には20万円ほどが目安となります。

また、住宅性能評価書の申請費用のほかに、住宅性能を上げるための追加工事が必要となるケースがあります。断熱材やサッシの種類を変更したり、耐力壁の数を増やす場合があるため、それらの工事に追加費用が必要です。

住宅性能評価書の取得方法

住宅性能評価書の取得は、建物の設計や建築を行うハウスメーカーが手続きを行います。住宅性能評価書を取得するまでの流れは以下のようになります。

住宅性能評価書の取得までの流れ
  1. 設計図書の作成
  2. 設計図書の評価
  3. 設計住宅性能評価書の交付
  4. 施行時の検査
  5. 完成時の検査
  6. 建設住宅性能評価書の交付

新築戸建ての場合は、基礎配筋工事が終了した段階、躯体工事完了時(上棟時)、下地張りの直前、建物が完成した時点の4段階で現場検査が行われます。

新築住宅と既存住宅の評価基準は異なる

住宅性能表示制度では、新築・中古に関わらず住宅性能評価を行うことができますが、新築住宅と中古住宅では、住宅性能を判断する評価基準が異なります。

新築住宅では性能評価基準の10分野が用意されているのに対し、中古住宅では9分野となっています。次からは、それぞれどのような評価がされるのかを解説していきます。

住宅性能表示制度の評価基準10分野

住宅性能表示制度の評価基準10分野

住宅性能表示制度では、国によって定められた評価基準を用いて住宅性能が評価されます。評価基準は、新築住宅は10分野で33項目、既存住宅は9分野で28項目と既存住宅のみを対象にした2項目が設定されています。なお、全て評価項目に対して必ず評価を受ける必要はなく、4分野が必須項目となっています。まとめると以下のようになります。

評価分野新築住宅既存住宅必須
①構造の安定に関すること
②火災時の安全に関すること
③劣化の軽減に関すること
④維持管理・更新への配慮に関すること
⑤温熱環境に関すること
⑥空気環境に関すること
⑦光・視環境に関すること
⑧音環境に関すること
⑨高齢者等への配慮に関すること
⑩防犯に関すること

各分野で複数の評価項目が用意されており、評価の高さに応じて「等級」が与えられます。ここからは、それぞれの分野で評価される項目について詳しく解説していきます。

①構造の安定に関すること

住宅は、地震・台風・積雪などの影響を受け、あらゆる方向の力を受けます。力に対する強度が低いと、繰り返し力を受けることで建物の傾きや損傷を発生させてしまいます。最悪の場合は、建物が倒壊して大切なマイホームを失ったり、家族の安全を脅かすことがあります。

構造の安定に関することでは、おもに構造躯体の強度や基礎・地盤に対して評価を行います。7項目のうち4項目が必須となっています。

評価項目戸建て共同住宅等等級必須
耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)1~3
耐震等級(構造躯体の損傷防止)1~3
その他(地震に対する構造躯体の倒壊等防止及び損傷防止)
耐風等級(構造躯体の倒壊等防止及び損傷防止)1~2
耐積雪等級(構造躯体の倒壊等防止及び損傷防止)1~2
地盤又は杭の許容支持力及びその設定方法
基礎の構造方法及び形式等

耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)

この評価項目では、地震に対する構造躯体の倒壊、崩壊等のしにくさを3段階で評価します。

等級内容
等級3極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震による力の1.5倍に対して倒壊、崩壊等しない程度
等級2極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震による力の1.25倍に対して倒壊、崩壊等しない程度
等級1極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震による力に対して倒壊、崩壊等しない程度

耐震等級(構造躯体の損傷防止)

この評価項目では、地震に対する構造躯体の損傷のしにくさを3段階で評価します。

等級内容
等級3極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震による力の1.5倍に対して損傷を生じない程度
等級2極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震による力の1.25倍に対して損傷を生じない程度
等級1極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震による力に対して損傷を生じない程度

その他(地震に対する構造躯体の倒壊等防止及び損傷防止)

この評価項目では、免震建築物であるか否かを表示します。なお、免震建築物とは、ダンパーやアイソレーター等の免震装置を設置することで地震の力を吸収して、建物の揺れを少なくする建築物のことをいいます。

耐風等級(構造躯体の倒壊等防止及び損傷防止)

この評価項目では、暴風に対する構造躯体の倒壊や損傷のしにくさを2段階で評価します。

等級内容
等級2極めて稀に(500年に一度程度)発生する暴風による力の1.2倍に対して倒壊、崩壊等せず、稀に(50年に一度程度)発生する暴風による力の1.2倍に対して損傷を生じない程度
等級1極めて稀に(500年に一度程度)発生する暴風による力に対して倒壊、崩壊等せず、稀に(50年に一度程度)発生する暴風による力に対して損傷を生じない程度

耐積雪等級(構造躯体の倒壊等防止及び損傷防止)

この評価項目では、屋根の積雪に対する構造躯体の倒壊や損傷のしにくさを2段階で評価します。多雪区域のみが対象となります。

等級内容
等級2極めて稀に(500年に一度程度)発生する積雪による力の1.2倍に対して倒壊、崩壊等せず、稀に(50年に一度程度)発生する積雪による力の1.2倍に対して損傷を生じない程度
等級1極めて稀に(500年に一度程度)発生する積雪による力に対して倒壊、崩壊等せず、稀に(50年に一度程度)発生する積雪による力に対して損傷を生じない程度

地盤または杭の許容支持力等及びその設定方法

この評価項目では、地盤または杭に見込んでいる常時作用する荷重に対し、抵抗し得る力の大きさ及び地盤に見込んでいる抵抗し得る力の設定の根拠となった方法を表示します。

基礎の構造方法及び形式等

この評価項目では、直接基礎の構造及び形式、または杭基礎の杭の種類・杭の口径・杭の長さを表示します。

②火災時の安全に関すること

火災が発生した際、家族や近隣住民の安全を確保するための対策が必要です。この分野では、火災の発生を知らせる警報装置の設置や避難経路の確保、延焼を防ぐための耐火性能等を評価します。

評価項目戸建て共同住宅等等級必須
感知警報装置設置等級(自住戸火災時)1~4なし
感知警報装置設置等級(他住戸等火災時)1~4
避難安全対策(他住戸等火災時・共用廊下)1~3
脱出対策(火災時)
耐火等級(延焼のおそれのある部分(開口部))1~3
耐火等級(延焼のおそれのある部分(開口部以外))1~4
耐火等級(界壁及び界床)1~4

感知警報装置設置等級(自住戸火災時)

自らの住宅で発生した火災を早期に感知する対策が施されているかを4段階で評価します。

等級内容
等級4評価対象住戸において発生した火災のうち、すべての台所及び居室で発生した火災を感知し、住戸全域にわたり警報を発するための装置が設置されている
等級3評価対象住戸において発生した火災のうち、すべての台所及び居室で発生した火災を感知し、当該室付近に警報を発するための装置が設置されている
等級2評価対象住戸において発生した火災のうち、すべての台所及び寝室等で発生した火災を感知し、当該室付近に警報を発するための装置が設置されている
等級1評価対象住戸において発生した火災のうち、すべての寝室等で発生した火災を感知し、当該室付近に警報を発するための装置が設置されている

感知警報装置設置等級(他住戸火災時)

共同住宅等において、同一階または直下の階にある他住戸等で発生した火災を早期に感知する対策が施されているかを4段階で評価します。

等級内容
等級4評価対象住戸において発生した火災のうち、すべての台所及び居室で発生した火災を感知し、住戸全域にわたり警報を発するための装置が設置されている
等級3評価対象住戸において発生した火災のうち、すべての台所及び居室で発生した火災を感知し、当該室付近に警報を発するための装置が設置されている
等級2評価対象住戸において発生した火災のうち、すべての台所及び寝室等で発生した火災を感知し、当該室付近に警報を発するための装置が設置されている
等級1評価対象住戸において発生した火災のうち、すべての寝室等で発生した火災を感知し、当該室付近に警報を発するための装置が設置されている

避難安全対策(他住戸火災時・共用廊下)

共同住宅等において、同一階または直下の階にある他住戸等における火災発生時の避難を容易にするために共用廊下に講じられた対策を評価します。排煙の形式や共用廊下の形状を表示するとともに、避難経路の火炎を遮る時間の長さを3段階で評価します。

等級内容
等級3火炎を遮る時間が60分相当以上
等級2火炎を遮る時間が20分相当以上
等級1その他

脱出対策(火災時)

3階建て以上の戸建てや共同住宅等において、火災時に通常の歩行経路が使用できない場合の緊急的な脱出への対策が講じられているかを表示します。

耐火等級(延焼のおそれのある部分(開口部))

延焼のおそれのある部分の玄関ドアや窓などの開口部の火炎を遮る時間の長さを3段階で評価します。

等級内容
等級3火炎を遮る時間が60分相当以上
等級2火炎を遮る時間が20分相当以上
等級1その他

耐火等級(延焼のおそれのある部分(開口部以外))

延焼のおそれのある部分の玄関ドアや窓などの開口部以外、外壁や軒裏の火熱を遮る時間の長さを4段階で評価します。

等級内容
等級4火熱を遮る時間が60分相当以上
等級3火熱を遮る時間が45分相当以上
等級2火熱を遮る時間が20分相当以上
等級1その他

耐火等級(界壁及び界床)

共同住宅等において、隣接する住戸間の界壁や界床の火熱を遮る時間の長さを4段階で評価します。

等級内容
等級4火熱を遮る時間が60分相当以上
等級3火熱を遮る時間が45分相当以上
等級2火熱を遮る時間が20分相当以上
等級1その他

③劣化の軽減に関すること

将来に渡って快適で安心の生活を過ごすために、住宅の劣化を軽減させる対策が必要となります。住宅に使われている木材や金属は、空気中に含まれる酸素や水分で錆びたり腐食したりするため、住宅に使用される材料の劣化の進行を遅らせるための対策が講じられているかを評価します。

評価項目戸建て共同住宅等等級必須
劣化対策等級(構造躯体等)1~3

劣化対策等級(構造躯体等)

構造躯体等に使用する材料の交換を伴う大規模な改修工事を必要とするまでの期間を延ばすために、必要な対策が講じられているかを3段階で評価します。

等級内容
等級3通常想定される自然条件及び維持管理の条件の下で3世代(概ね75~90年)まで、大規模な改修工事を必要とするまでの期間を伸長するために必要な対策が講じられている
等級2通常想定される自然条件及び維持管理の条件の下で2世代(概ね50~60年)まで、大規模な改修工事を必要とするまでの期間を伸長するために必要な対策が講じられている
等級1建築基準法に定める対策が講じられている

④維持管理・更新への配慮に関すること

住宅設備の中でも、給排水管やガス管はとても重要な部分です。漏水やガス漏れが発生してしまうと、日常に支障をきたすだけでなく、大きな事故に繋がる恐れがあります。給排水管やガス管が、点検や清掃、補修や交換がしやすいよう設置されているかを評価します。

評価項目戸建て共同住宅等等級必須
維持管理対策等級(専用配管)1~3
維持管理対策等級(共用配管)1~3
更新対策(共用排水管)1~3
耐風等級(住戸専用部)

維持管理対策等級(専用配管)

自らの住戸専用の給排水管・給湯管及びガス管の維持管理を容易とするための対策が講じられているかを3段階で評価します。

等級内容
等級3掃除口及び点検口が設けられている等、維持管理を容易にすることに特に配慮した措置が講じられている
等級2配管をコンクリートに埋め込まない等、維持管理を行うための基本的な措置が講じられている
等級1その他

維持管理対策等級(共用配管)

共用住宅等において、共用の給排水管・給湯管及びガス管の維持管理を容易とするための対策が講じられているかを3段階で評価します。

等級内容
等級3掃除、点検及び補修ができる開口が住戸外に設けられている等、維持管理を容易にすることに特に配慮した措置が講じられている
等級2配管をコンクリートに埋め込まない等、維持管理を行うための基本的な措置が講じられている
等級1その他

更新対策(共用排水管)

共用住宅等において、共用排水管の更新(交換)を容易とするための対策が講じられているかを3段階で評価します。

等級内容
等級3配管が共用部分に配置されており、かつ更新を容易にすることに特に配慮した措置が講じられている
等級2配管が共用部分に設置されている等、維持管理を行うための基本的な措置が講じられている
等級1その他

更新対策(共用排水管)

共同住宅等において、住戸専用部の間取りの変更を容易とするための必要な対策が講じられているかを評価します。躯体の天井高や部分的に躯体天井高が低くなっている部位の高さとともに、間取り変更の障害となりうるものの有無を表示します。

⑤温熱環境に関すること

快適な室内空間を維持するためには、住宅の断熱性能が大きく関わっています。断熱性能を高めることで、夏は涼しく、冬は暖かく過ごすことができるとともに、エアコン等に使用するエネルギーを削減し、光熱費の節約が可能で、地球環境にも配慮した住宅に住むことができます。

評価項目戸建て共同住宅等等級必須
断熱等性能等級1~7
一次エネルギー消費量等級1~6

断熱等性能等級

建物の外壁や窓といった外気に面する部分からの熱損失の防止を図るための、断熱性能向上に向けた対策の程度を7段階で評価します。各等級ごとの違いは以下の通りです。

等級熱損失の程度UA値ηAC値
等級7より著しい削減0.262.8
等級6著しい削減0.462.8
等級5より大きな削減0.602.8
等級4大きな削減0.872.8
等級3一定程度の削減1.543.8
等級2小さな削減1.67
等級1その他

UA値は室内と外気の熱の出入りのしやすさを表し、数値が小さいほど熱が出入りしにくく断熱性能が高いことを示します。ηAC値は太陽日射の室内への入りやすさを表し、数値が小さいほど日射が入りにくく遮断性能が高いことを示します。

なお、上記のUA値とηAC値はあくまで参考値であり、正確には8つの地域区分によって求められる値は異なります。(断熱等性能等級については別記事で詳しく解説しています。)

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一次エネルギー消費量等級

外壁や窓の断熱性能に加え、冷暖房設備や給湯設備などの省エネ設備を総合的に勘案して、一次エネルギーの消費量を削減するための対策の程度を6段階で評価します。

等級対策の程度
等級6省エネ基準より著しい削減(エネルギー消費量▲20%)のための対策が講じられている
等級5省エネ基準より大きな削減(エネルギー消費量▲10%)のための対策が講じられている
等級4省エネ基準相当の大きな削減のための対策が講じられている
等級3エネルギーの一定程度の削減のための対策が講じられている
等級2エネルギーの小さな削減のための対策が講じられている
等級1その他

⑥空気環境に関すること

住宅内部の空気に含まれる水分は、木材の腐食やシロアリ被害を引き起こす原因となります。また、ほこりや化学物質は人体への悪影響が懸念されるため、住宅内部の換気対策を行うとともに、有害な化学物質の発散量を少なくする必要があります。

評価項目戸建て共同住宅等等級必須
ホルムアルデヒド対策(新築住宅のみ)1~3なし
換気対策
室内空気中の化学物質の濃度等
石綿含有建材の有無等(既存住宅のみ)
室内空気中の石綿の粉じんの濃度等(既存住宅のみ)

ホルムアルデヒド対策(新築住宅のみ)

新築住宅を対象に、居室の内装の仕上げ及び換気等の措置のない天井裏等の下地材等からの、ホルムアルデヒドの発散量を少なくする対策の程度を3段階で評価します。なお、使用する建材が「特定建材」の場合のみ、内装と天井裏等ごとに等級を表示します。

内装(等級)天井裏等(等級)対策の程度
等級3ホルムアルデヒドの発散量が極めて少ない(日本工業規格又は日本農林規格のF☆☆☆☆等級相当以上)
等級2等級2ホルムアルデヒドの発散量が少ない(日本工業規格又は日本農林規格のF☆☆☆等級相当以上)
等級1等級1その他

換気対策

室内空気に含まれる汚染物質及び湿気を、住宅外部に排出するために必要な換気対策が行われているかの評価項目ウです。機械換気設備の有無とともに、台所・浴室・トイレに機械換気設備や換気窓が設置されているかを表示します。

室内空気中の化学物質の濃度等

住宅室内の空気中の化学物質濃度を実測し、その結果を測定条件とともに表示します。専用の測定器具を用いて測定を行うため、目視による検査と比べて手間と費用がかかります。

石綿含有建材の有無等(既存住宅のみ)

既存住宅を対象に、吹き付け石綿及び吹き付けロックウールの有無、測定する建材の名称や石綿含有率、使用されている部位や採取・分析条件等を表示します。

室内空気中の石綿の粉じんの濃度等(既存住宅のみ)

既存住宅を対象に、居室ごとの空気中の石綿の粉じん濃度を計測し、採取・分析条件等を表示します。

⑦光・視環境に関すること

日中に家事等のあらゆる作業を行う際に、視覚に大きな負担をかけないように一定の日光を確保することは、住宅を設計する上で重要な課題です。この評価項目では、窓などの開口部からもたらす日照・採光・通風といった物理的効果に加えて、眺望、開放感といった心理的効果に着目し、居室の開口部の面積と位置についての配慮を評価します。

評価項目戸建て共同住宅等等級必須
単純開口率なしなし
方位別開口比

単純開口率

住宅のリビングや居室など、採光ニーズの高い部屋を対象に、窓(開口部)の面積の床面積に対する割合を表示します。この数値が高いほど、日当たりの良い住空間と判断できます。

方位別開口比

東西南北と真上の各方位ごとの窓(開口部)の面積の割合を表示し、どの方向に開口部が多く配置されているかを表示します。

⑧音環境に関すること

住宅内部に外からの騒音が入ってきやすかったり、共同住宅で上下や左右の住戸からの声や足音が聞こえやすい住宅では、毎日を快適に過ごすことはできません。騒音の軽減に向けて、この項目では共同住宅の床・壁の遮音性や、建物の外壁・窓の遮音性を高めるための対策を評価します。

評価項目戸建て共同住宅等等級必須
重量床衝撃音対策1~5なし
軽量床衝撃音対策1~5
透過損失等級(界壁)1~4
透過損失等級(外壁開口部)1~3

重量床衝撃音対策

共同住宅等において、上下階との重量床衝撃音を遮断する対策の等級または相当スラブ厚を表示します。なお、スラブとはコンクリートで作られた床版のことをいいます。スラブ厚の数値が大きいほど遮断性の高い床と判断できます。等級で表示する場合の5段階で評価され、各等級の違いは以下の通りです。

内装(等級)対策の程度
等級5特に優れた重量床衝撃音の遮断性能を確保するために必要な対策が講じられている(日本工業規格のLi.r.h-50等級相当以上)
等級4優れた重量床衝撃音の遮断性能を確保するために必要な対策が講じられている(日本工業規格のLi.r.h-55等級相当以上)
等級3基本的な重量床衝撃音の遮断性能を確保するために必要な対策が講じられている(日本工業規格のLi.r.h-60等級相当以上)
等級2やや低い重量床衝撃音の遮断性能を確保するために必要な対策が講じられている(日本工業規格のLi.r.h-65等級相当以上)
等級1その他

軽量床衝撃音対策

共同住宅等において、上下階との軽量床衝撃音を遮断する対策の等級または軽量床衝撃音レベル低減量を表示します。なお、衝撃音とは物を落とした時の音や足音のことをいいます。衝撃音の数値はdb(デジベル)で表示され、数値が大きい遮断性の高い床と判断できます。等級で表示する場合の5段階で評価され、各等級の違いは以下の通りです。

内装(等級)対策の程度
等級5特に優れた重量床衝撃音の遮断性能を確保するために必要な対策が講じられている(日本工業規格のLi.r.h-45等級相当以上)
等級4優れた重量床衝撃音の遮断性能を確保するために必要な対策が講じられている(日本工業規格のLi.r.h-50等級相当以上)
等級3基本的な重量床衝撃音の遮断性能を確保するために必要な対策が講じられている(日本工業規格のLi.r.h-55等級相当以上)
等級2やや低い重量床衝撃音の遮断性能を確保するために必要な対策が講じられている(日本工業規格のLi.r.h-60等級相当以上)
等級1その他

透過損失等級(界壁)

共同住宅等において、各居室間の界壁の構造による空気伝搬音の遮断の程度を4段階で評価します。

内装(等級)対策の程度
等級4特に優れた空気伝搬音を遮断する性能が確保されている(日本工業規格のRr-55等級相当以上)
等級3優れた空気伝搬音を遮断する性能が確保されている(日本工業規格のRr-50等級相当以上)
等級2基本的な空気伝搬音を遮断する性能が確保されている(日本工業規格のRr-45等級相当以上)
等級1建築基準法に定める空気伝搬音の遮断性能が確保されている

透過損失等級(外壁開口部)

居室の外壁に設置されている窓の空気伝搬音の遮断性を、東西南北それぞれの方位別に3段階で評価します。

内装(等級)対策の程度
等級3特に優れた空気伝搬音を遮断する性能が確保されている(日本工業規格のRm(1/3)-25等級相当以上)
等級2優れた空気伝搬音を遮断する性能が確保されている(日本工業規格のRm(1/3)-20等級相当以上)
等級1その他

⑨高齢者等への配慮に関すること

マイホームの購入時点では快適に生活していても、歳を重ねるごとに移動に負担を感じたり、転倒等で怪我を負って生活に不便を感じることも考えられます。高齢者や障害を負った人でも生活しやすいように、車いすの使用や介助に必要なスペースを確保することに配慮した住宅設計が重要です。

評価項目戸建て共同住宅等等級必須
高齢者等配慮対策等級(専用部分)1~5なし
高齢者等配慮対策等級(共用部分)1~5

高齢者等配慮対策等級(専用部分)

住宅内で高齢者等への配慮がどの程度されているかを5段階で評価します。この評価項目では、階段への手すり設置や勾配の工夫、段差の解消や通路や出入り口の幅等から総合的な評価を行います。

内装(等級)対策の程度
等級5高齢者等が安全に移動することに特に配慮した措置が講じられており、介助用の車いす使用者が基本的な生活行為を行うことを容易にすることに特に配慮した措置が講じられている
等級4高齢者等が安全に移動することに配慮した措置が講じられており、介助用の車いす使用者が基本的な生活行為を行うことを容易にすることに特に配慮した措置が講じられている
等級3高齢者等が安全に移動するための基本的な措置が講じられており、介助用の車いす使用者が基本的な生活行為を行うための基本的な措置が講じられている
等級2高齢者等が安全に移動するための基本的な措置が講じられている
等級1建築基準法に定める移動時の安全性を確保する措置が講じられている

高齢者等配慮対策等級(共用部分)

共同住宅等において、高齢者等への配慮が建物の出入口から住戸の玄関までの共用部分で、どの程度されているかを5段階で評価します。

内装(等級)対策の程度
等級5高齢者等が安全に移動するための基本的な措置が講じられており、自走式車いす使用者と介助者が住戸の玄関まで容易に到達することに特に配慮した措置が講じられている
等級4高齢者等が安全に移動するための基本的な措置が講じられており、自走式車いす使用者と介助者が住戸の玄関まで容易に到達することに配慮した措置が講じられている
等級3高齢者等が安全に移動するための基本的な措置が講じられており、自走式車いす使用者と介助者が住戸の玄関まで容易に到達ための基本的な措置が講じられている
等級2高齢者等が安全に移動するための基本的な措置が講じられている
等級1建築基準法に定める移動時の安全性を確保する措置が講じられている

⑩防犯に関すること

最近では住宅への侵入犯罪が多く発生しており、住宅への防犯性に対する関心が高くなっています。家族の安全や財産を犯罪者から守るためには、周囲からの見通しを確保したり、建物の部材や設備を破壊されにくいものにするなど、様々な侵入防止対策が必要となります。

評価項目戸建て共同住宅等等級必須
開口部の侵入防止対策なしなし

開口部の侵入防止対策

想定される侵入行為による外部からの侵入を防止するための対策を表示します。住宅の開口部を外部からの接近のしやすさに応じてグループ分けを行い、グループごとに開口部に有効な侵入防止対策が講じられているかを表示します。

住宅性能評価を受けるメリット

住宅性能評価を受けるメリット

住宅性能表示制度を利用して第三者の評価機関から客観的な評価を受けることで、いくつかのメリットがあります。ここからは、住宅性能評価を受ける代表的なメリットを5つ紹介します。

第三者から正当な評価を受けられる

住宅性能評価は、国土交通省が「登録住宅性能評価機関」として登録した第三者機関が評価を行います。専門的な視点から、住宅性能表示制度で定められた正当な評価を受けることができるのは、住宅性能評価を受ける大きなメリットの一つと言えます。

様々なハウスメーカーや工務店が自社の良い点を挙げていますが、初めてマイホームを購入する人にとってはどの住宅会社が優れているのかを判断するのは難しいでしょう。

住宅性能評価を受けることで、全国で統一された基準で住宅の性能を可視化できるため、住宅を選ぶ際の判断がしやすくなります。

フラット35の金利優遇が受けられる

固定金利型の住宅ローンで人気の高いフラット35ですが、住宅性能評価書を取得することでフラット35の金利優遇を受けられる場合があります。

「省エネルギー性」「耐震性」「バリアフリー性」「耐久性・可変性」の4つについて、性能の高い住宅であることが認められることでフラット35Sの利用が可能となり、借入当初から5年もしくは10年の金利優遇が受けられます。

贈与税の非課税枠が拡大される

新築住宅や既存住宅を購入するために、父母や祖父母などの直系尊属から住宅の新築・取得・増改築のために資金の贈与を受けた場合、一般住宅であれば500万円の贈与税非課税が用意されていますが、住宅性能評価を受けた住宅であれば非課税枠が1,000万円まで拡大される場合があります。(2023年10月時点)

「省エネルギー性」「耐震性」「バリアフリー性」3つのうちいずれか1つに対して、定められた条件を満たす必要があります。この他にも適用条件が定められているため、直系尊属からの資金贈与を考えている人は事前に詳細を確認しておきましょう。

耐震等級に応じて地震保険料が割引される

住宅性能評価で耐震性の高い住宅と認められることで、地震保険料の割引が適用されます。割引率は取得した等級によって異なり、以下のようになります。

耐震等級割引耐震等級1-10%
耐震等級2-30%
耐震等級3-50%

マイホームを購入したら、万が一の地震に備えて地震保険に加入する人が多いと思いますが、住宅性能評価を受けることで地震保険料の割引が受けられるのは大きなメリットと言えるでしょう。

専門家の紛争処理対応を受けられる

建設住宅性能評価書が交付された住宅では、万が一ハウスメーカーや工務店とトラブルになってしまった場合に、国土交通大臣が指定する指定住宅紛争処理機関(各地の弁護士会)に紛争処理を申請することができます。(紛争処理申請手数料:1万円/件)

指定住宅紛争処理機関は、裁判によらず住宅の紛争を円滑・迅速に処理することができます。請負契約や売買契約に関する当事者間の全ての紛争処理を行ってくれるため、万が一の場合も安心です。

なお、指定住宅紛争処理機関に紛争処理を依頼するためには、「設計住宅性能評価書」と「建設住宅性能評価書」の両方を取得しておかなければいけない点に注意しましょう。

住宅性能評価を受けるデメリット

住宅性能評価を受けるデメリット

住宅性能表示制度には多くのメリットがある反面、いくつかのデメリットも存在しています。ここからは、住宅性能評価を受けることのデメリットを3つ紹介します。

住宅性能評価書の取得に費用がかかる

住宅性能評価を取得するためには、第三者の評価機関に検査と書類発行を依頼する必要があります。設計住宅性能評価書のみを取得する場合は10万円程、建設住宅性能評価書も併せて取得する場合には20万円程の費用がかかります。

建築コストが高くなる

住宅性能評価で特定の分野において等級を取得するためには、性能を上げるための追加工事が必要となる場合があります。工事箇所によっては建築コストがかなり高くなることも考えられます。

また、特定の評価項目を良くすることで、別の評価項目の評価が下がることもあるため、総合的に判断することが重要です。

間取りやデザインが制限される

住宅性能を高めることに意識を向けすぎると、間取りやデザインに制限がかかる可能性があります。省エネルギー性を高めるためには窓の大きさを小さくしたり、窓の数を少なくしなければいけない場合があります。

3階建てでインナーガレージを配置する場合にも、耐力壁を増やして駐車スペースを狭くしなければいけなくなる場合もあるため、住宅性能と実用面のバランスを考えた住宅設計が求められます。

まとめ

この記事では、住宅性能表示制度の取得方法や費用といった基礎的な内容をはじめ、住宅性能評価でどのような評価基準が定められているかとともに、メリット・デメリットについて解説しました。住宅性能評価は、第三者の専門機関から正当な評価を受けることができるため、住宅の性能を可視化して住宅選びの判断基準にすることができます。

住宅性能評価を受けることで、安心して住宅購入ができるだけでなく、住宅ローンや保険料、贈与税等の資金計画的にも様々なメリットがある一方で、住宅性能評価書の取得や住宅性能の向上に高額な費用が必要になるとともに、特定の住宅性能を向上することで、相反する住宅性能が低下したり、間取りやデザイン等の設計に支障をきたす場合があるため、どの住宅性能を向上させるか総合的に判断することが重要です。

自分に合った住宅を選ぶためには、まずは自分が住宅に求める性能を明確にすることが重要です。しかし、住宅性能表示制度で用意されている評価項目は多岐にわたるため、初めてマイホームを購入する人にとっては、どの住宅性能を重視すれば良いか分からない人が多いでしょう。そのような場合は、専門家に相談することをおすすめします。

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