地盤調査の方法は主に3種類|新築戸建ての地盤調査のやり方・費用・タイミングを解説

建物を新築する前に、まず行うのが「地盤調査」です。どれだけ強度が高く立派な建物であっても、軟弱な地盤の上に建ててしまっては、将来的に地盤沈下や建物の傾きが発生してしまう可能性があります。
建物を建てるのに適した地盤かどうかを判断し、必要に応じて地盤改良を行うために、地盤調査はとても重要な工程です。マイホームの新築を検討している人はしっかり理解しておきましょう。
この記事では、地番調査の基本的な知識、戸建て住宅の代表的な調査方法のやり方や費用とともに、地盤調査で悪い結果が出た場合の地盤改良の工法について解説します。
地盤調査とは?地盤調査の基礎知識

地盤調査は、建物を建てようとする土地に、建物の重さに耐えうる耐力を持っているかを調査することをいいます。地盤が軟弱だと地盤が液状化を起こし、地盤沈下や建物の傾きが起こる危険性があります。
建物を数十年以上安定した状態を保つためには、強固な地盤の上に建物を建てる必要があります。そのため、地盤調査は建物の新築に欠かせないとても重要な工程だと言えるでしょう。
地盤調査は法律で義務付けられている
地盤調査は、2000年(平成12)に改正された建築基準法や、住宅の品質確保の促進などに関する法律(品確法)によって法律で義務付けられており、建物の新築時には地盤調査を行う必要があります。
新しく建物を建てる場合には、建売住宅や注文住宅、マンションやビルといった物件種別に関わらず、必ず地盤調査をしなければなりません。
建売住宅であっても必ず地盤調査を行っているため、購入を検討している物件の調査結果が気になる人は、事前に不動産会社から調査結果を見せてもらいましょう。地盤改良を行っている場合は、どのような改良を行ったかも確認しておくことが重要です。
地盤調査を行うタイミング
「地盤調査はいつ行うのか?」と疑問に感じている人も多いかもしれません。当然のことながら、地盤調査は土地に建物を建てる前に行わなければなりません。
地盤に求められる耐力は、これから建てようとする建物の構造や大きさによって異なります。そのため、建物の間取りや階数、構造種別がほぼ確定したタイミングで行います。
地盤調査には、建物配置図・平面図・基礎伏図といった図面が必要となり、それらの図面が用意でき次第地盤調査を行うため、建築確認申請と並行して行うのが一般的です。
地盤調査に必要な時間・日数
地盤調査にかかる時間は調査方法によって異なりますが、半日から数日程度の時間を要するのが一般的です。スウェーデン式サイディング試験の場合は半日~2日程度、ボーリング調査であれば3日~1週間程度、表面波探査は半日程度となります。天候や調査範囲によって変動する場合があります。
地盤調査の作業は上記の日数で行われるのが一般的ですが、調査結果のレポート作成にも時間がかかるため、作業とレポート作成を含めると数日~2週間ほどの日数が必要です。
地盤調査の結果次第で地盤改良が必要になることがあり、その場合は工期が長くなってしまいます。転勤や転校等で入居を急ぐ場合は、なるべく早めに地盤調査を依頼するのが良いでしょう。
地盤調査の費用相場
地盤調査の費用は調査方法によって異なります。スウェーデン式サイディング試験の場合は10万円~15万円、ボーリング調査で25万円~30万円、表面波探査で7万円~12万円程が費用相場です。
ただし土地の広さや地盤の状況によっては、予定していた日数で終わらないことがあり、余分に費用がかかる可能性があります。また、複数の調査方法を用いて地盤調査を行うと2重で費用が必要になってしまうため、既存の地盤データを確認して、事前にある程度の地盤強度を把握しておいた方が良いでしょう。
なお、地盤調査によって地盤が軟弱だと判定された場合には、地盤改良工事が必要となります。地盤改良工事には数十万円~百万円以上の工事費用がかかる場合があります。
地盤調査の方法とは?戸建て住宅では主に3つのやり方がある

地盤調査には多くの方法がありますが、戸建て住宅を建築する際の地盤調査では主に「スウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)」「ボーリング調査(標準貫入試験)」「表面波探査法」の3つが用いられています。
新築する建物の大きさや地盤状況、予算などに応じて、それぞれ調査方法を使い分けることになります。ここからは、戸建て住宅で使われる主な地盤調査の3つのやり方について解説します。
スウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)

スウェーデン式サウンディング試験は、おもりの荷重とスクリューの貫入を併用して地盤強度を調査する方法です。鉄のロッドにスクリューポイントを取り付け、そこからおもりの荷重をかけると同時にスクリューを回転させ、地盤の固さや締まり具合、土層構成を測定します。
必要とする装置が少ないため作業性に優れており、作業時間が短く低コストで調査ができるとともに、調査ポイントを増やすことで敷地内の地盤の変化を把握することができますが、土の採取ができず簡易的な土質判定しかできなかったり、比較的柔らかい地盤でしか作業できない等のデメリットがあります。
スウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)の特徴 | |
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メリット | ・作業時間が短くて済む ・省スペースで作業できる ・低コストで調査できる ・狭い土地や斜面地でも調査できる ・敷地内の地盤の変化を把握できる |
デメリット | ・土質判定が必ずしも一致しない ・玉石層や固結地盤では調査できない ・深部までの調査はできない |
費用相場 | 10万円~15万円 |
調査時間 | 半日~2日程度 |
ボーリング調査(標準貫入試験)

ボーリング調査は、地面に穴を掘って地盤の状況や地層境界の深さを調べる調査方法です。ボーリングで穴を掘り、そこにサンプラーを設置してからハンマーを落下させ、その衝撃によってどれだけ地盤が沈んだかで地盤強度を測定します。深い層まで調査ができるため、比較的大きな建物の地盤調査で用いられます。
スウェーデン式サウンディング試験と比べて、硬い地盤での調査ができる上、土や岩盤を採取することで、土質を正確に把握することができますが、装置を設置するために広いスペースが必要になり、調査時間が長く費用が高い等のデメリットがあります。
ボーリング調査(標準貫入試験)の特徴 | |
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メリット | ・土質を詳しく調査できる ・硬い地盤でも調査できる ・深部まで調査できる ・支持層の確認ができる |
デメリット | ・装置の設置に広いスペースが必要 ・費用が高額 ・調査時間が長い |
費用相場 | 25万円~30万円 |
調査時間 | 3日~1週間程度 |
表面波探査法

表面波探査法は、振動を発生させる起振器と振動を捉える検出器を使う調査方法です。起振器によって発生した振動が地面に伝わり、その振動の伝わる速度で地盤強度を測定します。振動の伝わる速度が速い場合は地盤が固く、伝わる速度が遅い場合は地盤が軟弱だと判断できます。
地面に穴をあけずに地盤調査ができるため、アスファルトや砂利の地面などでも使用することができるとともに、調査時間が短く低コストで抑えることができますが、振動が伝わりにくい深部(地下10m以上)の調査精度が低くなってしまうため、重い建物の地盤調査には適さない等のデメリットがあります。
表面波探査法の特徴 | |
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メリット | ・調査時間が短くて済む ・費用が安い ・多様な場所に対応できる ・省スペースで作業できる ・狭い土地や斜面地でも調査できる |
デメリット | ・土を採取しないため土質判定ができない ・深部の調査精度が低い ・重い建物の地盤調査には不向き |
費用相場 | 7万円~12万円 |
調査時間 | 半日程度 |
地盤調査の結果が悪いときは?地盤改良の3種類の工法

地盤調査を行った結果、建築予定の建物の重量を支える強度がないと判定されてしまった場合には地盤改良工事を行う必要があります。
地盤改良の工法には、「表層改良工法」「柱状改良工法」「小口径鋼管工法」の3種類があります。ここからは地盤改良工事の3つの工法の特徴について解説します。
表層改良工法
表層改良工法とは、セメント系固化剤を使用して地表を固める地盤改良工法のことをいいます。地表から2mほど土を掘ってセメント系固化剤を流し込み、掘り起こした土を戻して混ぜることで地盤強度を高めます。新築戸建ての地盤改良では、大半がこの表層改良工法によって行われています。
小さな重機での工事ができるため、小さな土地でも作業が可能です。工期が短く安価での工事が可能ですが、軟弱地盤が深い位置にある場合や、勾配が急な土地では工事ができないケースがあります。
表層改良工法の特徴 | |
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メリット | ・工期が短い ・狭小地や変形地でも工事可能 ・様々な土質に対応できる ・工事費用が安価 ・小型の重機で工事可能 |
デメリット | ・軟弱地盤が深い場合は工事できない ・勾配が急な土地では工事できない可能性がある |
費用相場 | 20坪あたり約50万円 |
工期 | 1日~2日程度 |
柱状改良工法
柱状改良工法は、セメント系固化材と水を注入しながら直径60cmほどの穴を開け、地中に複数のコンクリートの柱(改良杭)を立てることで建物を支える地盤改良工事です。表層改良工法では工事が難しいとされる、軟弱地盤が2m~8mの深さまである土地の地盤改良を行う場合に用いられます。
表層改良工法と比べて、軟弱地盤が深い位置まである土地でも工事が可能ですが、地盤の土質によってはセメントが固化しなかったり、将来的に地中に残る改良杭の撤去に多額の費用を要する等のデメリットがあります。土地の状況によっては改良杭の撤去ができない可能性があり、その場合は土地の資産価値を下げる原因にもなるので注意が必要です。
柱状改良工法の特徴 | |
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メリット | ・工期が短い ・軟弱地盤が深くても工事できる |
デメリット | ・土質によっては工事不可 ・改良杭の撤去に多額の費用がかかる ・大型の重機が必要 ・狭小地や高低差のある土地では工事が難しい |
費用相場 | 20坪あたり約100万円(改良杭の長さや本数で変動) |
工期 | 2日~3日程度 |
小口径鋼管杭工法
小口径鋼管杭工法は、セメントではなく鋼管を地中深くにある固い地盤まで打ち込み、鋼管杭で建物を支える地盤改良工事です。軟弱地盤が地下30mの深さまで工事ができるため、重量のある建物を建てる場合でも対応可能です。
多くの鋼管杭を地中に埋め込むため材料代が高く、他の地盤改良工事と比べて高額になりがちですが、支持層となる固い地盤まで到達させるため、地盤強度を非常に高くすることができます。鋼管杭を打ち込む工程で大きな騒音や振動を発生させてしまうため、近隣住民への配慮が必要となります。
小口径鋼管杭工法の特徴 | |
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メリット | ・地盤強度が非常に高い ・工期が短い ・支持層が30mまで工事可能 ・小型の重機で工事できる ・狭小地や変形地でも工事できる ・改良杭の撤去が比較的容易 |
デメリット | ・支持層がない場合は工事不可 ・柱状改良工法と比べて高価 ・工事中に騒音や振動が発生 |
費用相場 | 20坪あたり約100~200万円(改良杭の長さや本数で変動) |
工期 | 1日~2日程度 |
まとめ
この記事では、地盤調査の基礎知識をはじめ、戸建て住宅の建築時に用いられている代表的な地盤調査方法3つを解説するとともに、万が一地盤調査の結果が悪かった時に行う地盤改良の工法について解説しました。新築戸建ての建築や購入を考える際、どうしても設備やデザインといった部分に目が行ってしまいがちですが、地盤調査は家づくりにおいて非常に重要な工程のためしっかりと理解しておきましょう。
日本では年間2,000回以上の地震が発生しており、住宅の耐震性を高めたいと考えている人も多いと思います。最近では耐震性を高めるために様々な製品が販売されていますが、どれだけ耐震性の高い住宅であっても、建っている土地の地盤が弱ければ元も子もありません。建てる建物や土地の地盤に合った地盤調査を行い、必要に応じてしっかりと地盤改良を行うことが重要です。
軟弱な地盤の上に建物を建ててしまうと、地盤沈下によって建物の倒壊や傾きが起こるリスクが高まります。建物が傾いてしまうと、傾きを正すために高額な工事費用が必要となり、場合によっては建て替えが必要になってしまうケースもあります。そのようなリスクを低減させるために、住宅の建築を考える際はハウスメーカーや工務店に、事前に地盤調査について相談することをおすすめします。