木造住宅の構造(工法)は主に2種類|在来工法とツーバイフォー工法の違いとは

木造住宅の構造(工法)は主に2種類|在来工法とツーバイフォー工法の違いとは

日本の戸建て住宅は木造で建てられるのが一般的で、国土交通省が公開しているデータによると、戸建て住宅の新設住宅着工数の約85%が木造住宅とされています。

それほど私たち日本人にとって馴染み深い木造住宅ですが、日本で普及している木造住宅には主に2種類の構造があることをご存じでしょうか?

木造住宅の構造によって特徴は異なります。工務店やハウスメーカーを選ぶ際の重要なポイントにもなりますので、木造住宅の構造における違いをしっかり理解しておきましょう。

目次

木造住宅の基礎知識

木造住宅の基礎知識

初めてマイホームの購入や新築を検討している人のなかには「木造住宅って聞いたことはあるけど、詳しくは分からない…」と思っている人も多いでしょう。

鉄骨造や鉄筋コンクリート造など様々な種類がありますが、日本の戸建て住宅の大半が木造で建てられています。それは木造住宅ならではの魅力が存在しているためです。そこでまずは、木造住宅の特徴やメリット・デメリットを理解しておきましょう。

そもそも木造住宅とは

木造住宅とは、柱や壁、梁といった主要構造部分に木材が使用されている住宅のことです。日本では古来より寺や神社等の木造建築物が建てられており、日本で現在ある建築物の約6割が木造建築物と言われています。

木材にはヒノキ、スギ、マツ、ケヤキ、クリなどが材料として使われています。四季のある日本では、温度や湿度が大きく変化するため、吸水性・吸湿性の高い木材は日本の風土に合った素材とされており、現在でも最も一般的な構造形式として親しまれています。

鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比べて安価で建てられるほか、間取りの自由度が高く、リフォームやメンテナンスがしやすいという特徴があります。

以前までは耐震性に不安がありましたが、最近では耐震性に優れた木造住宅も多く普及してきています。

木造住宅のメリット

多くの方に選ばれている木造住宅には多くのメリットが存在しています。ここでは木造住宅の代表的なメリットを4つご紹介します。

メリット①設計の自由度が高い

木造住宅の特に在来工法は設計の自由度が高く、あらゆる土地の形状に合わせて間取り設計を柔軟に行うことができます。日本の都心部には狭小地や三角形等の形状をした変形地も多数存在していますが、そのような土地にも木造住宅であれば建築可能です。

新築時だけではなく、将来的にリフォームや増改築を行う際にも比較的容易に工事ができるため、ライフステージに合わせてマイホームをカスタマイズすることができます。

メリット②建築コストを抑えられる

木造住宅に使われる木材は鉄骨や鉄筋コンクリートと比べて安価であるとともに、軽量で基礎工事や地盤改良工事が比較的容易に行え、クレーン等の機材も不要なため建築コストを抑えることができます。

鉄骨造の場合は鉄骨材に耐火処理や防錆処理を施す必要がありますが、木材の種類や厚みによっては十分な耐火性を発揮するため下処理も比較的容易に行えます。

工期も短くて済むため、人件費を抑えることができるとともに、材料を運ぶための運搬費も安く済むため、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比べて建築コストを抑えられますが、建築を依頼するハウスメーカーや仕様によっては建築費用が高くなる可能性があります。

メリット③固定資産税が安い

マイホームを購入すると毎年固定資産税を支払わなければいけません。固定資産税は土地と建物に分けられており、建物部分の税額については、建物構造によって税額が異なります。

一般的には、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比べて木造住宅の方が税額が安い上に、木造住宅の方が法定耐用年数が短く設定されており、建物の固定資産税は年々速い速度で安くなっていきます。

法定耐用年数が経過しても住宅自体に問題がなければ普通に生活ができるため、毎年の固定資産税の支払いが安く済むことは大きなメリットの一つと言えるでしょう。

メリット④断熱性・調湿性が高い

木材は水分を吸ったり放出したりすることで湿度の調整を行うとともに、鉄やコンクリートと比べて熱を持ちにくい材質なため断熱性や調湿性に優れています。

鉄骨造や鉄筋コンクリート造の場合は、建物が真夏の強い日差しに当たることで構造躯体が熱を持ち、建物全体が熱くなることで、冷房等の光熱費が高くなってしまう傾向にあります。

断熱性や調湿性が高いことで、一年中快適な住空間を保ちやすくなるとともに、冷暖房にかかる光熱費を節約することにも繋がります。

木造住宅のデメリット

多くのメリットがある木造住宅ですが、いくつかのデメリットも存在しています。木造住宅の代表的なデメリットを4つご紹介しておきます。

デメリット①耐用年数が短い

木造住宅は法律で定められている法定耐用年数が、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比べて短く設定されています。法定耐用年数が短いからと言って、実際に家の寿命や丈夫さが劣っている訳ではありませんが、やはり一般的な鉄骨造、鉄筋コンクリート造の建物と比較すると、木造の建物は短い期間で建物が建て替えられているのが実状です。

もちろん定期的に住宅メンテナンスを行い、丁寧に住むことで長期間住むことは可能です。最近では100年間住み続けられる住宅を目指す長期優良住宅の認定を受けた木造住宅も多く建てられています。

「木造住宅だから湿気や火災に弱い」という訳ではなく、木造や鉄骨造等に関わらず一定の基準が設けられているため、しっかり基準をクリアしている建物であるかが重要です。

デメリット②多くの柱や耐力壁が必要

木造住宅の主要構造部分に使われる木材は、一本一本の強度は鉄骨や鉄筋コンクリートに劣るため、多くの柱や耐力壁が必要となります。耐力壁とは、水平方向に対する圧力に耐えるために筋交いを用いた壁のことです。

木造住宅では耐震性を持たせるために、適切なバランスで柱や耐力壁を配置する必要があり、場合によっては設計が制限されてしまうケースもあるでしょう。

壁一面に大きな窓ガラスを設置したり、柱のない大空間のリビングは木造住宅では実現できない可能性があるため、建築を依頼する工務店やハウスメーカーに事前に相談しておく必要があります。

デメリット③気密性・防音性が低い

木材は鉄骨や鉄筋コンクリートと比べると遮音性・遮断性が低いため、音や空気を通しやすいことから、気密性や防音性が低くなる傾向にあります。

車通りの多い道路に面していたり、ピアノやギター等の楽器を演奏する際には気密性・防音性を高めるための工夫が必要となります。具体的には断熱材をウレタンフォームにしたり、床や壁等を二重構造にする等で対策できます。

気密性・防音性を高める工事は、入居後に行う際には大掛かりな工事になってしまうため、気になる方は必ず事前に工務店やハウスメーカーに相談するようにしましょう。

デメリット④害虫被害を受けやすい

木造住宅の主要構造部分に使われる木材は、シロアリの害虫被害を受けやすいという特徴があるため、シロアリ等に対する害虫対策が必要となります。

新築時は工務店やハウスメーカーによって防蟻処理がなされていますが、薬剤効果は約5年程で切れることが多いため、その後の施工はご自身で行わなければいけません。

主要構造部分にシロアリの住処を作られてしまうと、徐々に住宅内部が蝕まれていき、最悪の場合は修復が困難な程ダメージを受けてしまう可能性があります。シロアリは湿気の多い場所を好むため、家の風通しが悪かったり、家の近くに川や池が多い場合には、必ず定期的に防蟻処理を行うようにしましょう。

在来工法(木造軸組工法)とは

在来工法(木造軸組工法)とは

木造住宅の構造として最もポピュラーなものとして「在来工法(木造軸組工法)」があります。農林水産省が公表しているデータによると、令和3年度の木造住宅の新設住宅着工戸数における在来工法の割合は79%とされており、在来工法の人気の高さが伺えます。

ここからは、在来工法の特徴やメリット・デメリットについて解説していきます。

在来工法(木造軸組工法)の特徴

在来工法の別名を「木造軸組工法」といいます。この名称からも分かるように、在来工法は柱・梁・筋交いといった木材の軸を組み合わせることで建物を建てていきます。

コンクリートの基礎に柱を立て、柱と梁を組み合わせて骨組みを作ります。在来工法では「線で支える」と表現されることがありますが、それは主要構造部分に線状の木材を用いているからです。

柱だけでは水平方向の振動に弱いことから、筋交いと呼ばれる木材をX字状にした耐力壁をバランス良く配置することで、あらゆる方向からの振動にも耐えうる強度を持たせることができます。各部材の接合部に用いられる金物の種類や品質によって耐震性や耐久性に差が生じます。

軸組工法は線状の木材で構成することから、間取りの自由度が高いとされていますが、耐震性を持たせるために耐力壁の数を増やせば増やすほど自由度が低くなる傾向があります。

在来工法(木造軸組工法)のメリット

日本で昔から親しまれ、今なお人気の高い在来工法ですが、その理由はどこにあるのでしょうか。ここからは在来工法の代表的なメリットを3つご紹介します。

プランニングの自由度が高い

在来工法は柱や梁を組み合わせて建築するため、壁部分の形状や素材、配置場所の選択の幅が広く、様々な間取りに対応できるという特徴があります。

外壁や屋根の形状等の構造の自由度も高いため、間取りや外観に強いこだわりを持った方には嬉しいメリットと言えるでしょう。

将来的にリフォームがしやすい

在来工法では、柱や梁、耐力壁といった骨組みとなるため、耐力壁以外の壁については壁を抜いて部屋を繋げたり、新たに壁を設けて部屋を区切ったりといったことが比較的容易に行えます。

ライフステージによって、「子供が独立したから子供部屋をなくして大きな寝室にしたい」「親を引き取ることになったから部屋を増やしたい」などの要望が出てくる可能性がありますが、在来工法の場合はそれらの要望に対応しやすいというメリットがあります。

依頼できる工務店が多い

在来工法は日本で昔から伝わる工法で、今でも最も多くのシェアを占めている工法です。そのため、在来工法で建物を建てられる工務店が多く、工務店選びの選択肢が広いというメリットがあります。

工務店によって採用している木材や設備、デザインや設計など得意分野やコンセプトが異なるため、自分好みのマイホームを建ててくれる工務店を見つけやすくなります。

在来工法(木造軸組工法)のデメリット

在来工法にはいくつかのデメリットも存在しています。ここからは在来工法の代表的なメリットを3つご紹介します。

耐震性への対策が必要

在来工法に用いる木材は一本一本の強度はそれほど高くないため、耐震性を持たすためには木材を太くしたり、耐力壁を増やす、金物の品質を高めるなどの対策が必要です。

柱や耐力壁の間隔が広くなるほど耐震性が下がってしまうため、耐震性を上げるためには柱や耐力壁の間隔を狭める必要がありますが、そうすることによって、在来工法のメリットである「プランニングの自由度」が下がってしまう懸念があります。

耐震性を高めるために木材の量を増やすことは、建築費用の増額にも直結してしまうため、建築費用・プランニング・耐震性のバランスをどうするかが重要となります。

職人によって品質に差が生じる

在来工法では、建築作業の多くは現場で行うため、施工する職人の知識や経験、技術によって住宅の品質に差が生じてしまう傾向にあります。

最近では規格化されて木材を使用したり、設計から施工をシステム化することによって昔ほどは差が生じにくくはなってきましたが、ほかの工法と比べるとやはり職人による差は生じやすいというのが実状です。

工務店やハウスメーカーに建築を依頼する場合には、どのような職人が現場を担当するかを確認しておく必要があると言えるでしょう。

工期が長くなる

在来工法は建築現場での作業量が多く、工期が長くなる傾向にあります。一般的な住宅を建てる場合には4カ月~半年ほどの期間が必要となります。

転勤や転校などの理由で早期入居を希望している場合には、事前に工務店やハウスメーカーに相談し、希望日までに建物が完成するかを確認するようにしましょう。もし希望日までに間に合わない場合には、別の工法を検討してもよいかもしれません。

ツーバイフォー工法(木造枠組壁工法)とは

ツーバイフォー工法(木造枠組壁工法)とは

在来工法の次に人気のある構造に、ツーバイフォー工法(木造枠組工法)があります。農林水産省が公表している令和3年度の木造住宅の新設住宅着工戸数におけるツーバイフォー工法の割合は19%とされており、在来工法と合わせて98%となることから、日本の木造住宅の新設住宅のほとんどが在来工法とツーバイフォー工法のどちらかで建てられていることが分かります。

ここからは、ツーバイフォー工法の特徴やメリット・デメリットについて解説していきます。

ツーバイフォー工法(木造枠組壁工法)の特徴

ツーバイフォー工法(2×4工法)は木造枠組壁工法の一種です。在来工法が「線で支える工法」と言われるのに対し、ツーバイフォー工法は「面で支える工法」と言われています。

ツーバイフォー工法では、2インチ×4インチの角材で作られた枠材に構造用面材を接合して剛性の高い壁や床を作ることから、高い耐震性を備えていることに加え、気密性や耐火性、遮音性にも優れています。

構造用製材には、2×4材以外に、2×6、2×8、2×10など様々な規格が用意されており、使用する製材によって「ツーバイシックス」や「ツーバイエイト」のように呼び名が変わります。

ツーバイフォー工法は用いられる角材だけでなく、釘の大きさや打ち込む間隔まで規定されているため、安定した品質を期待できる反面、間取りの自由度が下がるほか、将来的に壁を抜いてリフォームを行うのが難しい場合もあります。

ツーバイフォー工法(木造枠組壁工法)のメリット

ツーバイフォー工法には、在来工法と比べて様々なメリットが存在しています。ここからは、ツーバイフォー工法の代表的なメリットを3つご紹介します。

耐震性や耐久性を持たせやすい

線で支える在来工法と比べてツーバイフォー工法は面で支える特性を持っているため、耐久性と耐震性に優れており、地震や台風などの災害時でも家の倒壊、損傷を回避できる可能性が高くなります。

2インチ×4インチの角材で作った枠の上に構造用合板を張り重ねることで、強い強度を備えられるため、福祉施設や商業施設、教育施設など大型施設でもツーバイフォー工法により建築されています。

気密性や遮音性に優れている

ツーバイフォー工法は、角材で作られた枠に構造用合板を貼り重ねたパネルを繋ぎ合わせることで、気密性や遮音性を高めることができます。

気密性が高いと、外気が住宅内部に侵入しにくくなるため、断熱性を向上させることに繋がり冷暖房効率の向上が期待できます。遮音性の高さは防音効果に直結するため、外部の騒音が住宅内部に入りにくくなるとともに、ピアノやギターといった楽器音が外に漏れるのを防止することができます。

品質が安定しやすく工期が短い

2インチ×4インチの規格化された角材や構造用合板を使用するため、完成度にバラつきが少なくなり、品質が安定しやすいというメリットがあります。

統一規格の材料を使用するなどのシステム化により、現場での作業量が減少されるため、在来工法と比べて短い工期で住宅を建てることが可能です。

ツーバイフォー工法(木造枠組壁工法)のデメリット

ツーバイフォー工法はアメリカやカナダを中心に世界中で採用されていますが、日本では在来工法の方が多く普及しています。その理由はどこにあるのでしょうか?ここからは、ツーバイフォー工法のデメリットを解説します。

間取りの自由度が低い

ツーバイフォー工法は規格化された部材で組み立てていくため、在来工法と比べて間取りの自由度は下がります。パネルを曲げることはできないため、なめらかな曲線のある家などは建てることが難しくなります。

システム化を図ることによって効率的な建築を可能にしたツーバイフォー工法ですが、柔軟性には劣るため、間取りに強いこだわりを持っている場合には在来工法を選ぶようにしましょう。

カビやダニが発生しやすい

気密性に優れているツーバイフォー工法ですが、気密性が高いことで住宅の内外の気温差が生じやすくなります。その結果、結露によってカビやダニが発生し、住宅内部を痛めてしまう可能性があります。

住宅の内外で気温差が大きくならないように、壁内には隙間なく断熱材や防湿気密シートを施工するとともに、小屋裏には軒裏換気などを設けて有効な換気対策を施す必要があります。

大規模リフォームがしにくい

柱、梁、耐力壁で強度を持たせる在来工法と比べて、ツーバイフォー工法は一つ一つの壁で強度を持たせているため、壁を撤去して部屋を繋げるといった大掛かりなリフォーム工事は難しくなります。

壁を撤去することによって、住宅の強度を大きく下げてしまう可能性があるため、間取り変更が伴う大規模リフォームを行う際には十分な注意が必要です。

まとめ

この記事では、木造住宅の基礎知識から始まり、木造住宅の構造や工法ごとのメリット・デメリットについて解説してきました。

日本で建てられている戸建て住宅の多くが木造住宅で建てられているため、木造住宅の構造について疑問を感じている方も多いとは思います。この記事が、そのような方々のお役に少しでも立てれば幸いです。

建物の構造や工法や、建物を建てた後に変更することはできませんので、事前にしっかりと在来工法とツーバイフォー工法の違いを理解し、ご自身の要望に合った工法を選ぶようにしましょう。

工務店やハウスメーカーによっては、今回ご紹介した在来工法とツーバイフォー工法以外に、「木造プレハブ工法」や「木造ラーメン工法」を採用している注文住宅会社もあります。

ぞれぞれの構造や工法によって特徴が異なるため、まずはいくつかの会社に相談することをおススメします。

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