借地借家法を分かりやすく解説|借地権の種類とメリット・デメリット、売却時の注意点

借地借家法を分かりやすく解説|借地・底地・借地権付き建物の相続時、売却時の重要点

借地借家法は、土地の権利関係を規律する法律であり、借地権を売却する際に大きく関わってきます。借地権を売買する際には専門的な知識が求められるため、内容をしっかり理解しておくことが重要です。

本記事では、借地借家法を分かりやすく解説するとともに、借地権の種類やメリット・デメリット、借地権を売却する際の注意点について解説します。

目次

借地借家法とは

借地借家法とは

借地借家法とは、土地や建物の賃貸借に関するルールを定めた法律です。契約期間や更新、建物の再築、権利の譲渡などについて民法とは異なる特別な規定が設けられており、地主・借主双方の権利関係に大きな影響を与えます。売却の場面では法的な制約や手続きが問題となることも多いため、基本的な仕組みを理解しておくことが重要です。

借地借家法の基礎知識

借地借家法は、土地や建物の賃貸借に関する特別なルールを定めた法律です。建物を建てる目的で土地を借りる場合(借地)や、建物そのものを借りる場合(借家)に適用されますが、駐車場用地のように建物の所有を目的としない土地賃貸借については、原則として適用対象外となります。

契約は民法に基づき当事者の合意によって成立するものですが、不動産の賃貸借では、土地や建物を所有する貸主と、それを借りる借主との間に立場の差が生じやすいのが実情です。貸主が自由に賃貸借契約の内容を定め、一方的に解約させられてしまうようでは、借主の生活基盤を覆すことになりかねません。

そこで民法の一般的なルールに加え、借主を保護するための「特別法」として設けられたのが借地借家法です。特別法は、特定の分野について民法より優先して適用される法律を指し、賃貸借契約の内容が借主に著しく不利にならないよう一定の制限を設けています。この仕組みによって、土地や建物の利用関係の安定が図られています。

旧借地法と新借地借家法の違い

借地権に関わるトラブルの多くは、平成4年7月31日以前に締結された旧借地権によるものが大半です。平成4年8月1日に旧借地権は大きく改正され、新借地借家法が制定されました。

旧借地権と新借地借家法の大きな違いは、土地所有者からの更新拒絶がしやすくなった点にあります。旧借地権では、土地所有者側から契約更新を拒絶する場合「正当事由」が求められ、契約更新を拒絶することが困難な状態にありましたが、新借地借家法では、「定期借地権」「一般定期借地権」「建物譲渡特約付借地権」「事業用借地権」が制定され、確定期限で終了する契約締結が可能となりました。

旧借地法では、解約する際は借主による建物取壊し・更地返還が原則でしたが、新借地借家法では土地所有者に建物を譲渡する特約を設けることが可能となり、新借地借家法の方がトラブルは少ない傾向にあります。

借地借家法に関係する用語解説

借地借家法を深く理解するためには「借地」「底地」「借地権付き建物」について知っておく必要があります。それぞれの意味や関係性を整理していきましょう。

借地

借地とは、建物の所有を目的として借りている土地をいいます。地主が所有している土地の上に借主名義の建物を建てるため、土地の所有者と建物の所有者が別々になるのが特徴です。

借主は土地を使用する対価として地代を支払い、建て替えや借地権の売却の際には地主の承諾が必要となるケースが一般的です。相続や売却の場面では、土地そのものではなく、土地を利用する権利(借地権)が対象となります。

底地

底地とは、借地権が設定されている土地のことを指します。地主が所有権を持っていますが、土地を利用する権利は持っていないため、地主は土地を利用することは出来ません。

旧借地権で土地を貸している場合、地主に土地の利用権限が戻る時期が分からないため、底地の金融機関からの担保価値は低く見られがちです。かなり昔から貸し出している土地は地代も安く設定されていることが多く、売却時の価格もかなり安くなってしまうケースが多く見受けられます。

借地権付き建物

借地権付き建物とは、借地上に建てられた建物をいいます。借地権付き建物を取得する場合、建物の所有権とあわせて借地権も取得することになります。土地の所有権は取引対象に含まれず、地代の支払義務や契約条件は原契約を引き継ぐのが一般的です。

売却時には地主の承諾が必要となることがあり、契約内容によっては承諾料を求められたり、そもそも売却ができない可能性があります。建て替え時にも地主の承諾が必要となる点に注意しましょう。

借地権の種類と特徴

借地権の種類と特徴

借地権にはいくつかの種類があり、それぞれ契約期間や更新の可否などのルールが異なります。借地権の種類と特徴を正しく理解していないと、底地や借地権付き建物の売却時に想定外のトラブルに発展することも考えられます。ここでは借地権の種類と特徴を解説します。

旧借地権(旧法)

旧借地権とは、平成4年7月31日以前に締結された借地契約に適用される旧借地法に基づく借地権をいいます。最大の特徴は、借主保護が非常に強い点にあります。契約期間満了時に地主が更新を拒絶するには「正当事由」が必要とされ、そのハードルは極めて高く、半永久的に更新され続けるケースも少なくありません。

建物が存在する限り契約関係が継続する傾向が強く、地主側からすると土地が事実上返還されにくいという側面があるため、底地の資産価値は低く評価されやすく、売却価格も大幅に低くなることが一般的です。現在でも都市部には旧借地権が多く残っているため、売却時には契約内容の確認が不可欠です。

普通借地権(新法)

普通借地権は、平成4年8月1日以降に締結された契約に適用される借地借家法上の一般的な借地権です。契約期間は原則30年以上とされ、更新後は20年、さらにその後は10年ごとの更新となります。

旧借地権と同様に、地主が更新を拒絶するためには「正当事由」が必要となります。借主保護の考え方は旧借地権から引き継がれており、地主からの契約解除がしにくいのはほぼ変わりありません。地主が更新を拒絶する場合には、借主は地主に対して借地上の建物を買い取るよう請求できる「建物買取請求権」が存在します。

売却や建て替えには地主の承諾が必要となるケースが多く、承諾料が発生する場合もあります。売却時には、契約内容や残存期間、承諾条件を十分に確認することが重要です。

定期借地権(新法)

定期借地権は、新借地借家法により創設された「更新のない借地権」です。契約期間満了と同時に確実に終了する点が最大の特徴で、地主側の土地活用の自由度を高める制度といえます。

代表的なものとして、存続期間50年以上の「一般定期借地権」、事業用途に限定される「事業用定期借地権」、期間満了時に建物を地主へ譲渡する「建物譲渡特約付借地権」などがあります。

更新がないため、将来的に土地が確実に戻るという安心感が地主側にはありますが、借主側にとっては資産価値が残存期間に大きく左右されるという特徴があります。売却時には、残存期間が価格に直結するため、契約内容と残存年数の確認が重要となります。

借地権のメリット・デメリット

借地権のメリット・デメリット

借地権は、土地を所有せずに建物を持つことができる仕組みであり、資金負担を抑えられるなどのメリットがある一方で、地主の承諾が必要となる場面や売却価格が安くなりやすいといったデメリットも存在します。借地権の売却を検討する際には、メリットとデメリットの両面を理解したうえで判断することが重要です。

借地権のメリット

土地の税金を支払わなくてよい

借地権により建物を所有する場合、借主は土地にかかる固定資産税・都市計画税を支払う必要がありません。借地権の場合は土地所有者(地主)が土地部分の税金を負担することになるため、借主は土地の税金を支払う必要がなく、物件の維持にかかるコストを軽減することが可能です。

特に固定資産税評価額の高い都心部では、固定資産税・都市計画税が年間数十万円になるケースも少なくなく、これらの税金の負担を少なくできるのは借地権の大きなメリットといえます。

相続税・贈与税の支払いが少なくなる

借地権は、「土地を利用する権利」であるため、相続税や贈与税の評価額は所有している土地よりも低く算定されます。国税庁が地域ごとに定めている「借地権割合(路線価図にA~Gで表示)」が用いられます。

借地権割合は一般的に30~90%程度で設定されており、例えば借地権割合が70%の地域であれば、評価額×70%が借地権の評価額となります。借地権割合は低い方が税負担を抑えられるため、事前に該当地の借地権割合を調べておくことが重要となります。

借主側は契約更新を容易に行える

旧借地権や普通借地権では、地主が正当な理由を示さない限り、基本的に契約更新を拒絶することができないため、借主側は契約更新を容易に行うことができます。借地権は借主の権利が守る側面が強く、契約期間の終了後であっても更新請求を法律上行いやすいのは大きなメリットです。

建物が存在する限りは土地を利用できる可能性が高いため、住居や店舗として利用する場合でも安心して使い続けることができます。ただし、定期借地権のように更新のない契約ではこのメリットは当てはまらないため、締結している契約の種類をしっかり把握しておくことが重要です。

安価で一等地に建物を所有できる

借地権付き建物は、土地を購入する必要がないため、所有権付き物件と比べて初期費用を大幅に抑えられる点が大きな魅力です。特に土地価格の高い都市部や駅近エリアでは、土地代が物件価格の大部分を占めることも多くなりますが、借地権であれば初期費用を抑えつつ一等地に建物を所有することが可能となります。

また、昔から続く借地契約では地代が比較的低額に設定されているケースも多く、現在の地価水準と比べて割安な条件で利用できる場合があります。土地の固定資産税や都市計画税は地主が負担するため、借主は維持費用を抑えつつ一等地に建物を所有できるのは、借地権ならではの大きなメリットといえるでしょう。

借地権のデメリット

土地を返還する必要がある

借地権はあくまで「土地を利用する権利」であり、土地の所有権そのものを取得するわけではありません。契約期間が満了し更新がなされない場合、土地を地主へ返還する必要があります。特に定期借地権では更新がないため、契約期間満了時には確実に土地を明け渡さなければなりません。

借主保護の性質が強い旧借地権や普通借地権であっても、正当事由が認められる場合には更新が拒絶される可能性があります。将来的に土地が手元に残らないという点は所有権との大きな違いであり、長期的な資産形成という観点では注意が必要となります。

地代や更新料の支払い義務がある

借地権では、契約で定められた地代を地主へ支払う義務があります。所有権付きの土地であれば地代は発生しませんが、借地権では契約が続く限り支払いが継続します。契約更新時には更新料の支払いが求められるケースもあるため注意が必要です。

地価の上昇や経済情勢の変化により、地主から地代の増額請求がなされることもあります。協議で解決できない場合には調停や裁判に発展することもあり、長期的に見れば想定以上のコスト負担となる可能性がある点はデメリットといえるでしょう。

自由に売却や増改築ができない

借地権付き建物を売却する場合や、建物を建て替え・増改築する場合には、地主の承諾が必要となるケースが一般的です。承諾料の支払いを求められることも多く、売却価格に影響を及ぼす要因となります。

場合によっては地主が承諾しないケースもあり、取引が円滑に進まない可能性も考えられます。資産としての流動性が制限されやすい点は、借地権の大きなデメリットの一つといえます。

更地返還を求められる場合がある

借地契約が終了した際には、建物を解体して更地の状態で返還するよう求められるのが原則です。建物の解体費用は借主側が負担するのが一般的であり、数百万円単位の費用が発生することも考えられます。

定期借地権では期間満了による契約終了が確定しているため、解体費用を見越した資金計画が求められます。借地付き建物を保有する際は、将来的な解体コストを把握しておくことが重要です。

銀行の担保価値が付きにくい

借地権付き建物は土地の所有権がないため、金融機関からの担保評価が低くなりやすい傾向にあります。特に残存期間の短い定期借地権では、将来的な利用制限や契約終了リスクがあるため、融資条件が厳しくなります。

購入時の住宅ローン審査が通りにくくなったり、融資額が希望より少なくなるケースもあります。売却時にも買主側が融資を受けにくいことで、買い手が限定され、価格が伸びにくくなる要因となります。資産価値の流動性という面では、所有権物件より不利になりやすい点に注意が必要です。

借地権を売却する際の注意点

借地権を売却する際の注意点

借地権の売却には、地主との関係が密接に関わってきます。地主から売却承諾が得られない場合には、そもそも借地権の売却ができない可能性があります。また、契約の残存期間、建物登記の有無も売却に関係してくるため、売却時には必ず確認しておく必要があります。

トラブルや売却価格下落を防ぐためにも、しっかりポイントを押さえて売却を進めることが重要です。

地主への承諾依頼は慎重に行う

借地権を売却する際には、基本的に地主からの売却承諾が必要です。地主と上手く交渉ができないと、売却を承諾してもらえなかったり、高額の承諾料を求められる場合があります。

地主の方が不動産に詳しいケースが多く、無知な状態で交渉を行うと地主に有利な条件を提示されることも考えられるため、地主と交渉を行う際は不動産会社に依頼するのが望ましいでしょう。また、交渉結果は地主と借主の関係性に左右されることも少なくないため、日頃から良好な関係を築いておくことが重要です。

底地とのセット販売を試みる

借地権の売却が難航する大きな要因は、土地の所有権を保有できず、建物の建て替えや増改築に制限が出やすい点にありますが、底地と借地権をセットで販売することで、これらのデメリットを解消することができます。

地主サイドでも、土地を持っているのに使用できず、売りたくても売れずに悩んでいるケースは多く見受けられます。借地権と底地をセットで販売することが出来れば、買主は通常の不動産同様、土地の所有権と建物の所有権を登記することが出来るため、借地権のみで売却するのに比べて高額での成約が期待できます。

建物登記の有無を確認する

建物の所有を第三者に証明する点において、建物登記の有無は非常に重要な役割を持っています。建物登記がされていない場合、名義人登記を行うことができないため、借地権付き建物として売却することができません。

建物表題登記(表示登記)と所有権保存登記を行うことで、建物の存在と所有者を主張することができます。ただし、これらの登記手続きには、登録免許税や司法書士費用が発生する点に注意が必要です。地主に借地権の売却を検討している場合は、登記を行わなくても良いケースもあるため、無駄に費用を支払わなくて済むように、事前に地主や不動産会社に確認しておくことをおすすめします。

契約内容を確認する

借地権の売却前には、必ず地代や更新料の金額、借地契約の残存期間を確認しておきましょう。平成4年8月以降に借地契約を締結している場合は、契約種別も確認しておく必要があります。契約書に契約期間が記載されていない場合、旧借地権は木造20年、鉄骨造やRC造は30年となり、普通借地権の場合は原則30年とみなされます。

契約書を紛失している場合は、地代や更新料の支払い履歴を元に金額を確認します。契約の残存期間が分からない場合は、建物登記簿の建築年月日から推測することができます。建物が登記されていない場合は、地主に確認してみるのも一手です。契約内容は次の所有者に引き継がれるため、必ず確認するようにしましょう。

まとめ

借地借家法は、土地や建物の賃貸借に関するルールを定め、借地権の更新や譲渡、建て替えなどに大きく関わる法律です。借地権には旧借地権・普通借地権・定期借地権などの種類があり、契約期間や更新の可否が売却価格に影響を与えます。

借地権は土地購入が不要で初期費用や税負担を抑えられる一方、地代・更新料が発生し、売却や増改築では地主の承諾が必要となる点に注意が必要です。売却時は承諾交渉を慎重に進め、契約内容や残存期間、建物登記の有無を確認するようにしましょう。

借地権の売却をスムーズに進め、取引後のトラブルを防止するためにも、専門家に相談しながら計画的に進めることをが重要です。当社では、借地権の売却相談も積極的に行っておりますので、借地権についてご不明点やご不満がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

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